2022年2月12日土曜日

勝ち組の論理はどこまで通用するか?

  米国はGDP世界一を走り続け、一人当たりGDPでも63,358ドル(2020年)で5位。その一方でロシアのGDPは11位と韓国(10位)を下回り、一人当たりのGDPでは10,115ドルで64位。62位の中国(10,511ドル)よりも少ない。

 こうした数字をみると、ウクライナ情勢ではジャイアン(米国)がのび太(ロシア)を挑発していじめているような感じがしなくもない。

 在ロシア米大使を務めたバーンズCIA長官はこう話す。「プーチンは戦術には長けているが、長期的な戦略はない。もしあれば人材を育てて化石燃料に頼らない産業構造をつくり、経済を発展させるだろう」

 たしかに米国はこうした戦略で勝ち組となり、PCやスマホ、ファーストフード、ショッピングモール、ネット販売を世界中に普及させた。

 そうした中で女子大が存在し、女性の能力開発や社会進出に寄与している。ヒラリー氏は名門女子大のウェルズリー大学で自治会長や政治グループの代表者を務め、卒業生総代スピーチを行った。当時の共学校では男子学生に押されて女子学生にはこのような体験はできず、女子大に通ったことでリーダーとしての資質を磨くことができた、と彼女は振り返る。

 つまり強者のいない環境を作り出すことで、弱者が成長する機会が与えられる。

 適切な例えではないとは思うが、知的障碍者の施設が存在する理由も似ている。生まれつき知能の低い子供が健常児と同じ学校に通っても、自分に最も適した教育を受けることは難しい。

 もっと言えば、そもそもヒトの知性にはかなりのばらつきがある。「健常であれば人間はみな同じレベルの知能を持って生まれたと漠然と信じている、あるいはそう信じたいと思う人は多いのだが、それは違う。残酷な話ではあるが、背の高さがバラバラなのと同じように、各人の能力や知性も千差万別なんですよ」と精神科医の益田裕介氏は言う

 では世界全体をひとつの学校に例えたら、どうだろうか。

 お金持ちの家に生まれ、両親から高い知能の遺伝子をもらった男の子が勝ち組として独走する。ビル・ゲイツは典型例である。ビル・クリントンのように恵まれない家庭に生まれた成功者もいるが、おそらく彼には卓越した頭脳が備わっていたのだろう。

 そう考えていくと「世界はひとつ」という、理想のように思われている概念にも疑問が生じる。

 他者を理解することは重要だが、一体化する必要はない。友情を育むのはよいが、結婚しなくてもいい。女子大が共学校と交流してもいいが、共学にならなくてもいい。そのほうが「弱者」が成長する余地が生まれ、結果として勝ち組になれる。

 ハリウッド映画はわかりやすくて気軽に楽しめる。だがハリウッド映画やアメリカのドラマばかりでは味気ない。だからこそ日本政府は税金を使ってでも国立劇場を建て、歌舞伎座がやらない古典の通し上演、復活上演、新作発表を行い、日本文化を守ろうとしている。

 農業や漁業の補助金、地方交付金も同じ考えなのだろう。東北と関西では、観光地として同じ土俵で戦えない。一年の半分を雪に覆われる地方では、どんなに頑張って秋田犬キャンペーンを展開しても、温暖な和歌山県の人寄せパンダほどの集客はできない。では秋田犬や十和田湖がなかったらどうだろうか。日本の素晴らしい魅力のひとつが失われてしまう。

 同じようにロシアにはロシアのやり方があり、米国の発想ではうまく行かないかもしれない。化石燃料をうまく利用しつつ経済を回していくことで、ようやくGDP11位を保っている、という見方もできる。