株価は市場動向、金利、為替でも動くが、最終的には当該企業に残った現金と財務体質に収れんされる。キャッシュフロー(CF)計算書に出ている営業CFと投資CFを足した数字がプラスとなり、有利子負債を減らしていることが重要だ。
それが本書の結論であり、具体的に東芝、JR東海、某空調設備会社、餃子の王将を例にわかりやすく解説している。
企業が決算発表を行うと、決算短信に出ている売上、営業利益、経常利益の前年同期比に注目しがちである。上方修正、増配、自社株買い、株式分割などは確かに株価上昇の要因になる。
ただ〇〇バガーといったスケールで儲けるには中長期の投資でないと中々難しい。そのためにはキャッシュフローを読み解く力が重要になる。「日本株キャッシュフロー研究所」というYouTubeチャンネルはそうした視点で企業分析をしており、本書を読むきっかけとなった。
要するにいくら利益を上げていても、過剰投資や放漫経営で出費が多すぎれば手元に現金はあまり残らず、マイナスにもなりうる。そうした企業は経営に行き詰まり、倒産の危機に直面する。
それとは逆に堅実経営で現金を積み増し、無借金経営や有利子負債の少ない会社であれば、次なる投資や研究開発に回せるし、自社株買いや配当で株価を支えられる。三菱重工やディスコなど過去数年で株価が何倍にも増えた銘柄はこのような優良企業である。
それとは逆に、東芝はサムスンなど同業他社との激しい競争のため巨額の投資を迫られ、結果として経営に行き詰まり2023年に上場廃止した。その一方でJR東海ではCFが常にプラス、有利子負債も年々減らした。競争の激しい半導体製造業とは対照的に、JR東海は東海道新幹線と直接競合する会社がないため、設備投資も必要最小限で済む。
また他者にお金を貸したり不動産経営に手を出す企業は、本業で稼ぐ自信のなさの表れであり、いいサインではないと著者は見ている。
CF計算書は、1980年代後半〜90年代にかけて欧米で先行して導入され、日本は2000年に世界基準(会計ビッグバン)に合わせて導入した。米国や英国、国際財務報告基準(IFRS)適用企業では、日本よりも早い時期に財務諸表の構成要素として必須化されている。
日々の市場動向に振り回されず、中長期で大儲けをしたい人にはCFは非常に有益なツールとなる。