動物園+遊園地の一体型レジャー施設・アドベンチャーワールド(AW、和歌山県白浜町)には現在7頭のジャイアントパンダが暮らし、中国以外の施設では最多を誇る。
昨年11月に生まれた子パンダ楓浜(ふうひん)の様子はAWのYouTubeチャンネルで毎日アップされ、一挙手一投足が注目の的となっている。
大人気のため、最近まで楓浜の見学は抽選制で、当たったとしても割当時間はわずか4分だった。それが10月21日から屋外運動場に移るとともに抽選と時間制限はなくなり、来訪者は好きなだけ見られるようになった。
とりあえずコロナが落ち着き、楓浜がまだ小さいうちに見られるのは今しかない。
ホテルから路線バスで20分と聞いていたが、南紀白浜空港で大量に乗客が乗ってくる。支払いは現金しか使えず、ぴったりの小銭がない乗客が多かったため、降車だけでかなりの時間がかかった。
開園時刻の午前10時を15分ほど過ぎ、すでに購入済みの入場券(4,800円)のQRコードをかざして入る。
入口近くの「パンダラブ」というコーナーに行くと、大人のパンダが笹をバクバクと食べている。楓浜はどこにいるのか。。と思っていると、やがてアナウンスが流れる。「楓浜がいる場所はパンダラブではなく、ブリーディングセンターです」
見学者は中高年が目立つ
そこで園内中央のブリーディングセンターに移動。すでに人がたくさんいるが、そこまですごい混雑ではない。見学者は中高年が多く、若者や子供はあまりいない。本格的なカメラをのぞき込むプロのカメラマンのような男性も目立つ。
遊具の頂上で寝転び、けだるそうにゴロゴロする楓浜。その脇では母パンダの良浜(らうひん)が笹を爆食いしている。大人のジャイアントパンダが1日に食べる笹の量は20~30キロにもなるという。
やがて楓浜も動き出し、どうやら遊具の頂上でブランチをしたい模様。最初はうまく行かないが、三度目の正直でめでたく成功。
30分ほど親子パンダを観察したあと、ブリーディングセンターの屋内展示を見る。入口の看板には「中国成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地日本支部」と小さめに書いてある。
「紀州のドンファン」は16頭の父親
ワシントン条約附属書I(最も絶滅が危惧される種)に指定されているジャイアントパンダの繁殖を目的とした施設で、ここで生まれたパンダはいずれ中国に「帰国」する。AWでは周辺のきれいな空気や水などの好条件でこれまで17頭ものパンダが生まれ、うち11頭は中国に渡っている。
17頭のうち16頭の父親は永明(えいめい)。現在29歳でヒトでいえば80代後半と高齢だが、昨年には良浜との交尾で楓浜が生まれた。まさに「紀州のドン・ファン」。母パンダの良浜は過去7回の出産で10頭の子供を産み育ててきた。
ブリーディングセンターを出ると、サファリワールドをめぐる専用車ケニア号がまもなく出発するところ。これに乗り込み、アフリカやアジアの草食動物と肉食動物を集めたエリアをめぐる。
絶滅危惧種のトラに会う
アムールトラは落ち着いて威厳に満ちた風貌が印象的。この種もワシントン条約附属書Iに指定され、野生では約450頭しかいない。
ホワイトタイガーは1951年を最後に野生から姿を消し、今では世界各地の動物園に200頭しか残っていない。
【解説:トラは強さの象徴とされるが、かつての10万頭から現在では地球上に約3,000頭へと激減。英国統治時代のインドで上流階級が狩猟を行い、トラの生息地である森林の伐採が行われた。中国などでトラの骨を利用した精力剤や毛皮の需要が根強く、密猟や違法取引が行われて深刻な問題となっている。】
このほかライオン、キリン、ゾウ、シマウマなど一通りの動物を見られる。
ケニア号の乗車時間は25分。ツアーのあとは鳥のエリアを見学。カゴではなく、外や大きな仕切りの中で多くの種類の鳥が放し飼いにされ、驚くほど人慣れしてすぐ近くを歩いて行く美しい鳥もいる。
石垣島で見たリスザルも同じエリアにいる。
ワンちゃんは疲れ気味
レストランは数軒あり、パンダの顔をしたハンバーガーやオムライスもある。テリヤキバーガーのセット(980円)はUSJでの同様のセット(1,650円)よりもおいしい。
驚きと見応えのある「アニマルアクション」
「アニマルアクション」という別のショーでは鳥、犬、ヤギ、アシカなど多くの種類の動物たちが登場。自然+動物+人間の一体化した世界というコンセプトで、よくできた演出で意外性と見応えがある。観客には学者や企業重役風の男性もいて、盛んに拍手を送っていた。
欧州を中心にアニマルウエルフェアの考え方から、動物のショーには否定的な見方もあり、すでにサーカスにおける動物使用を全面禁止している国も少なくない。確かに野生生物の自由を奪い商業利用する行為ではある。だが人間と動物がこれほど密にコミュニケーションを取り、共同作業をできる可能性を示す場としての価値もあると感じた。
河口湖の猿回しを見たときは、猿がかわいそうという感情が先立った。その理由はおそらく、調教師>>猿という支配関係が明らかで、天井に届くほどの長い梯子乗りなど危険な曲芸もあったからだろう。その一方で「アニマルアクション」やイルカのショーではハラハラするような場面はなく、動物と人間の一体感のもと、動物が人間になついている様子が伝わってきた。
白浜は温暖な気候ではあるが、温度調節をした建物に極地の動物もいる。シロクマは一頭しかおらず、寂しそうにも見える。親子パンダの屋外運動場以外の場所でも感じたのだが、日の当たらない室内で一人で過ごす個体はあまり元気がない。
動物園の中に遊園地も併設されており、追加料金を払えばジェットコースターなどの乗り物にも乗れる。遊具も動物がモチーフになっている。
玉三郎丈と観覧車デートを妄想
やや駆け足ではあったが、動物園のエリアは全て見学を終了。最後に観覧車に乗ってみようかと思い立った。
というのも、坂東玉三郎丈が先月の名古屋公演中、休日に「密かに観覧車に乗ったのでございます」とオフィシャルサイトに書いている。この言い方だと一人で行ったのではないかという感じもする。
料金700円の切符を買い、入口に行くとすぐに順番が回ってきた。AW全体を見下ろし、その先には海も眺められる。イルカのショーの会場とサファリワールドのケニア号も見える。
パンダの楓浜と良浜はずっと昼寝中で動かない。
観覧車はいかにも遊園地の乗り物で、いい大人が一人で乗るのは、なかなか勇気が要る。だがロンドンアイやお台場など世界のどこにでもあり、人気の理由として、高い所から全体を見渡すことで文字通り視野が広がる。日常生活をとらえるうえで示唆となる体験であり、世界を見下ろすことで簡単に自己肯定感がアップするという心理効果もある。
閉園は午後5時だが、4時以降には動物たちは奥へと移動。広場から檻に入れられたゾウはあまりにも窮屈でかわいそう。なにも悪いことをしていないのに。。ただ野生ではライオンに食われたり、象牙目的で密猟される危険もあるわけだが。。
帰りはバスで南紀白浜空港へ行き、羽田まで1時間10分。イギリスに行くつもりで英国航空のマイルを貯めていたが、いつになるのかわからないので、JALの国内線で使用。満席に近かったが窓側の席を取れた。
東京が近づき街の灯りが広がると、帰ってきたんだなと実感する。
まとめ
・楓浜は入口近くの「パンダラブ」ではなく、園内中央の「ブリーディングセンター」にいる。昼寝で動かない時間もあるので、開園後にすぐ様子を見に行くべし。
・人間と動物の緊密な連携プレー「アニマルアクション」は一見の価値あり。
・大所高所に立つべく、大人こそ観覧車に乗ってみてはいかが。
・欧州を中心とした動物愛護に関する国際的なトレンドから目が離せない。





