五木ひろしが歌うのを聞いていると、あまりにも自然な発声と表現力で、自分もカラオケに行けば同じように歌えるんじゃないかと思ってしまう。だが実際には鍛え抜かれた技であり、この域に到達するには相当な訓練と知性が必要となる。
バーンズCIA長官のインタビューやパブリックスピーキングを聞いていると、同じような感覚を持つ。
知識人が書いた本に登場する、ふつうの会話で頻度は高くないが的確に表現できる単語を時折おりまぜ、全体として自然に話を進めて行く。外国人でも内容をすっと理解でき、ほとんど平板に近いが退屈ではないトーンで話すこともあり、即座には反論する気持ちを起こさせない。洗練された説得力とは、このような状態を指すのだろう。
頭のよさそうな眼光だが、鋭すぎて怖いというほどではない。若い頃は相当なハンサムだったのだろうと想像させ、今でも俳優だとしても違和感がない。と言うか誰かに似ている。。とモヤモヤしていたが、しばらく考えてわかった。ティラーソン元国務長官(トランプ大統領に突然解雇された閣僚の一人で元エクソンモービルCEO)。眉の角度と白髪がほぼ同じ。
バーンズ氏はオックスフォード大学で国際関係の博士号を取得、米国の外交官として33年の経験があり、"Career Ambassador"という極めて取得が困難なキャリア外交官の最高位を持つ。在ロシア米大使や、オバマ政権で国務省のナンバーツーである副長官を務めた。
バイデン大統領にCIA長官に指名され、上院で行われた公聴会ではCIA職員を"women and men"とさらっと表現した。女性蔑視と批判されたトランプ政権のあと、自分は白人男性ではあるが、こうした批判には当たらないとやんわり主張しているのだろうか。私は政府高官のスピーチを観察するのが趣味の一つだが、"women and men"という順番で言う人はあまりいない。それをあえて表現することで、行動力を示す意味合いも感じられる。
先日紹介したドキュメンタリーのシリーズで、バーンズ氏はプーチン大統領に関する質問に答えている。
バーンズ氏いわく、プーチンは汚職で得た資金を潤滑油のように使って支配力を発揮している。プーチン氏がサンクトペテルブルク副市長だった頃から知っているが、当時はほとんど目立たず、同じ会議に出席したこともあるが、全く印象に残っていない。あれほど素早く権力の階段を駆け上がったのは驚きだという。
ロシアは2016年大統領選に介入したが、当初はプーチン氏自身もトランプ当選までは現実的に期待していなかっただろう。だが結果として、トランプ大統領は米国を混乱させる道具となり、予想以上にプーチンの思惑はうまく行った。