2022年1月12日水曜日

米国の弱体化とロシアの関与

 2016年米国大統領選にロシアが介入した結果、トランプが勝利した。米国公共放送PBSの制作したドキュメンタリーやヒラリー氏の回顧録はそう結論づけている。

 こうした疑惑をプーチン氏は一貫して否定、「IPアドレスが証拠だと言うが、IPアドレスなどいくらでもでっち上げできる」と言う。米国こそ他国の選挙に介入している、と。

 ロシア疑惑の概要はこうだ。ヒラリー氏の国務長官就任中、反プーチンのデモが起きた。ヒラリーは民主主義を求めるデモへの支持を表明し、プーチン政権を専制的だと批判した。

 オバマ政権とNATOはリビアの内戦に介入してカダフィを殺害。つぎの標的は自分だと恐れたプーチンは、何としてもヒラリー大統領の実現を阻止したかった。

 そして米政府よりもセキュリティーが弱く、米政治の権力闘争の内幕がよりわかる民主党大会のサーバーに入り込み、ヒラリー陣営がサンダースを倒す戦略を暴露した。さらにヒラリー健康不安説などフェイクニュースをでっち上げてSNSで拡散。こうした活動はフリーランスのハッカーに行わせ、プーチンが総指揮を取った。

 オバマ政権は諜報機関の調査でこの動きを把握していたが、現職大統領が選挙に介入していると思われることを過剰に恐れ、本格的な対策に乗り出すのが遅れた。

 選挙に勝利したトランプは「アメリカファースト」を掲げ、米国は民主主義を旗印に専制君主を倒すことをやめた。プーチンは安堵した。さらにトランプは、大統領選へのロシア介入を調査していたコミーFBI長官を任期途中で突然解雇した。これはかえってトランプ・プーチンがタッグを組んでいたことを伺わせる。

 ヒラリー大統領が実現していれば、女性やマイノリティーの権利はさらに向上しただろう。彼女は勉強家で政治や官僚組織にも通じているため、トランプ政権のようなメチャクチャぶりには到底ならなかったはずだ。ビル・クリントン政権のような明るい時代が戻ってきたかもしれない。

 だが一方で、オバマ大統領は自らの執政で最大の失敗は、カダフィ追放後のリビア混乱への準備ができていなかったことだ、と語っている。フセイン追放後のイラク混乱、米軍撤退後のアフガン混乱を見ても、米国による専制国への民主主義の「押し売り」は結果的に大失敗となり、かえって国際情勢を不安定にする。こうした一連の動きに嫌気が差した人々は米国を憎み、軽蔑するようになる。中国もこうした米国の民主主義の欠陥を指摘している。自分は何なのと言いたくもなるが。。

 米国は表向きには民主国家ではあるが、実際には白人男性の勝ち組が支配している。自由競争は好条件を持って生まれた人々(白人男性、裕福な家庭、自然条件に恵まれた住みやすい都市出身など)に有利に働く。

 プーチン宮殿の豪華さを見れば、専制国家ではもっと既得権益が強いのかもしれない。だがそう思った瞬間、世界中に別荘を持つビル・ゲイツ宮殿はさらにすごいのではないか、とも想像する。

 数年前にロシアを旅行した際にモスクワ郊外は貧しく荒廃していたが、それを言えばデトロイトも似たり寄ったりか、さらにひどい状況だった。ロシアでは警察官の多さに驚いたが、銃事件が絶えない米国より治安がよい、という見方もできるかもしれない。

 日本は第二次大戦で敗北したおかげで、天皇陛下は神様という狂ったカルト集団から民主国家になったのかもしれない。だが戦争自体がなく、戦前の繁栄が続いていたらどうだっただろう。ファシズムに走ることなく、米軍の空爆で国土を焦土にされることもなく、長い歴史の伝統や国民が築き上げた財産を十二分に生かして、今よりも繫栄した国家になっていた可能性はあると思う。

 そう考えると、人権や民主主義を推進するために空爆で市民や国家元首を殺すという、アメリカの破綻した論理と傲慢さが、めぐりめぐって、現在の米国の弱体化につながったような感じもする。