最近ではブラックな労働から足を洗うべく、さっさと稼いでFIRE(Finance Independence, Retire Early)を目指す生き方がトレンドになっている。
だが仕事にもいろいろな種類があり、同じ会社や仕事でもメリットとデメリットがある。そこで30年ほど働いた経験をシリーズとしてブログ記事で振り返ってみたい。第一回は公務員。私が勤めたのは米政府だが、公務員の世界には国籍を超えた共通点がある。
公務員のメリット
1)世の中の動きがよくわかる
時事問題になる案件に直接関わり、政治家や政府高官と会うことでマスコミや書籍には出てこない事実や背景を知ることができる。世の中のキーパーソンと意思決定の仕組みがわかり、素晴らしい社会勉強になる。
2)社会貢献が目的である
最近では民間企業でもCSRやSDGsが重視されているが、目的は利潤の追求である。だが国や自治体は社会貢献が目的であり、そうした発想に立って働ける。
3)高学歴者が多い
同僚は難関校の出身者が多く、基礎学力が高い。共通一次やセンター入試、論述式の試験などをパスしてきたため、文系・理系とも幅広い知識と優れた文章作成能力を持っている。複雑で難解な文書を正確に理解し、それをわかりやすく説明できる。大学院留学の経験者も珍しくなく、上級英語力があり海外事情にも通じている。
服装や外見にも知性があり、タトゥーをしている職員は見たことがない。全体的にまじめな人が非常に多く、見るからに変な人はゼロに近い。
4)人脈を作れる
公務員は勤続年数の長い職員が多く、職場の内外に幅広いネットワークを作れる。怪しい人物だと思われることはほとんどないので、いろんな人に会ってもらえる。
5)世間受けがいい
おそらく公務員は最も警戒されない職種であり、世間受けはよい。マンションを借りる、クレジットカードを作るなど、職業記入欄のあるプロセスが非常に簡単。
公務員のデメリット
1)政権に振り回される
誰が大統領、首相、首長になろうが、その人物が正しい。トランプ、バイデン、菅義偉、菅直人。。マスコミやネットでどんなに叩かれようが、彼らの言うことを忠実に実行する公僕としての資質が問われる。
そういった意味で、根本的なレベルでクリエイティブな職業ではない。むしろ、配役を正確に演じる俳優としてのスキルが求められる。論理的思考能力が高く正義感の強い人物ほど、精神的につらい仕事と感じることがあり、相当な忍耐力がないと務まらない。実際、自殺する公務員はまれではない。
2)ルールが膨大で細かい
公務員の主な仕事は法律の施行であり、想像を絶するほど膨大な量の細かい規則に縛られる。そしてルールは増えこそすれ、減ることはない。これに辟易したトランプ大統領は、規制を一つ作ったら、二つなくすという、新たなルールを作った。
明文化された法律・規制のみならず、不文律もある。例えば、国務省(日本の外務省にあたる)は席順などのプロトコールをメチャクチャ重視する。公用車で上司と外出する際には、必ず上司が上席に座る。ただし官庁によって違いがあり、商務省ではそれほど気にしない。
3)前例主義に陥りがち
上記のような環境では新たな発想が生まれにくく、前例を気にする。前例とは、裁判で言う判例のようなものだ。このため、たとえ前例がおかしくても、前例という理由だけで実行する根拠になる。
4)評価基準があいまい
民間企業は利潤を追求しているため、評価を数値化しやすい。例えば、野村證券の営業職は完全に売上高で評価されるため、性別や年齢による差別が入り込む余地がないという。
これとは対照的に、公務員の成果は数値化しにくく、結局のところ上司の胸先三寸になりやすい。証券会社の利益至上主義に嫌気が差し、社会貢献度の高い仕事を求めてNGOに転職してみたら、もっとドロドロした理不尽な世界だった、という話も聞いたことがある。公務員にも当てはまるかもしれない。
5)なにをやるにも時間がかかる
前例主義とあいまいな評価基準から、前例に関する知識量と比例関係にある勤続年数が重視される。公務員の世界では「何年お勤めですか?」とよく聞かれ、長ければ長いほど偉い。体育会系の球拾いと似た図式もあり、発言力を持てるまでにかなりの年数が必要になる。
社会主義をテーマに旧東ドイツを舞台とした映画で、自動車を注文してから納車までに13年もかかった、というエピソードがある。これと似た状況を私も職場で体験し、ここは本当に資本主義国なのかと、かなり驚いたことがある。
