2022年3月25日金曜日

多摩動物園にみるウクライナ危機の本質

 戦争が起きる理由はいつも同じ=資源や領土が欲しい。野生の肉食動物と変わらない。

 ウクライナ戦争を舞台とした米露対立に関してこのような感想を持ち、動物を見に行きたくなった。

 上野動物園と同様、多摩動物公園は東京都の外郭団体が運営している。地元では多摩動物園と呼ばれ、東京西部の小学校遠足の定番である。私も一年生の時に訪れ、ライオンを放し飼いにしているエリアをめぐる「ライオンバス」に乗って怖かったのを覚えている。

 まん延防止等重点措置が先日終了し、2カ月以上閉鎖していた多摩動物園も3月22日に再開した。ライオンやトラ、チーターといった野生生物をじかに見ることで、人間の戦いの本質に迫ってみたいと思い、約半世紀ぶりに訪れた。

 すでに学校は春休みに入り、開園時刻の9時半近くに到着すると、子供連れで長蛇の列ができている。このような事態を予想して、事前にネットで入場券(600円)をゲットしてQRコードも用意していたのだが、係員は全ての客を同じ列に並ばせている。

 このあたりが郊外にあるお役所の施設という感じだ。

至近距離で見るライオン

 待つこと15分、ようやく中に入る。ライオンバスは多摩動物園の目玉で、まずはこちらのチケット(500円)を取る。バスの事前予約は受け付けておらず、正門から坂道を歩いて15分程度のライオンバス乗り場まで行って券を買わなければならない。

 ここでも15分ほど並び、ようやく入場。次のバスが来るまで待合室でさらに15分待つ。バス乗り場は頑丈な鉄格子で仕切られ、厚い窓ガラスでシマウマの模様をした車体のバスが入ってくる。係員に指示された場所に座ると、隣には立派な望遠レンズを首から下げた中年のカメラ女子が座っている。

 バスが動き出すと鉄格子が開き、さほど大きくないエリアをライオンのいる場所や動きに合わせて何度かめぐる。自動車教習所の広さくらいだろうか。子供の頃はかなり大きいと感じたのだが。

 バスの脇にはライオンへのおやつとして牛の骨が置かれており、それをめがけてライオンが近づいてくる。もはや人馴れしている感じもする。


 この至近距離はすごい。


 たてがみのカッコいいオスのライオンも近くで見られる。


 乗車時間は10分ほど。先ほどの待合室や外からも、ライオンたちの様子を眺めることができる。いやはや、もはや野生ではなく、食う心配もなく日なたでくつろいでいる。のどかな風景はウクライナ危機とは別世界だ(😅)。


人馴れした野生生物
 
 ライオンのエリアのすぐ近くにチーターがいる。ガラスで囲まれた場所とその隣に野外のスペースもあるが、ともに小さい。世界最速(時速130km)の俊足を生かせず残念だが、その美しい肢体を自慢するかのように、キャットウォークを披露している。


 そしてやはり、タイガースファンとしてはトラをじっくりと堪能したい。アドベンチャーワールドはトラやライオンといった肉食動物をひとつの広い敷地で管理しているが、多摩動物園ではチーターと同様、トラ専用の敷地が屋外・屋内にひとつずつある。屋外の敷地はチーター用よりやや大きく、走れるほどの広さではないが散歩はできる。


 休憩を取ってあくびをしている姿にも威厳がある。

 
 多摩動物園にはジャイアントパンダはいないが、レッサーパンダはいる。リズミカルに小走りする動作がたしかにパンダっぽい。つやつやの赤毛(レッサーパンダは英語ではred pandaと言う)と太い尻尾が愛くるしい。ほかの野生生物と同様、レッサーパンダもすぐ近くに顔を近づけてくる。カワイイ!!😻


 ちなみに正門近くの建物には、あの「ランラン、カンカン」の剥製が置かれている(!)現在のレンタル制とは異なり、この2頭は中国から贈られたため、このような展示が可能になっているようだ。まさか多摩動物園であの懐かしいパンダたちに会えるとは思わなかった😍。


 コアラなどオーストラリアの生物もいる。コアラの睡眠時間は1日20時間とほぼ終日寝て過ごす。だがラッキーなことに起きている場面も見られた。

 
 だがすぐにぐっすりと寝てしまう。


 このほかアフリカゾウ、インドゾウ、フクロウ、鳥類、ヤギ、サル、クマ、ウサギ、ネズミ、さらには昆虫(生きたゴキブリのコレクションまで!!)となんでもいる。

坂道を歩き、かなりの運動量

 全体として多摩丘陵の起伏に富んだ広大な敷地にできている。園内の一部を無料バスが巡回してはいるものの、正直あまりよく考えられたルートではない。このため全ての生物を見ようと思うと、坂道をかなり歩くことになる。


 食事を提供する場所は園内に数カ所あるが、コロナ対策で閉鎖中の店もある。だが園内マップ、お知らせ、HPで言っている内容が異なり、やや混乱する。開いている店でもメニューはかなり限られる。

 
  レストランはかなり貧弱と言わざるを得ないが、その代わりに無料で使えるベンチやテーブル、飲み物やアイスクリームの自販機は結構ある。桜の花も咲きはじめ、おにぎりでも作ってきて外で気持ちよくピクニックはいかがですか、ということなのだろう。

 
 だがここでもツッコミを入れれば、サーティーワンのアイスクリームを自販機で売っているのはいいのだが、カップ式なのにスプーンがどこにもない。これならコーン式のアイスにするか、もしくは容器にスプーンをつけるべきだ。
 
 目的のレストランが地図では「閉鎖中」となっていたため、とりあえずカロリー補給に自販機でアイスを買い、しかしスプーンがないため、仕方なくカップの紙をひきちぎりながらかぶりつく、ということになってしまった。
 
公営と民営の異なる問題
 
 こういうおバカな事態が生じるのは、おそらくお役所が運営しているからだろう。工夫しようがしまいが、利益が上がろうが下がろうが、責任者の処遇には影響がないのだろう。もしあれば、素人が一日体験しただけで気づく問題はとっくの昔に改善されているのではないだろうか。

 と言って思い出したが、先日訪れた偕楽園は茨城県庁が運営しているが、事前に入場券を買っていた客はすぐに入場できるシステムになっていた。お役所によっても差がある、ということだろう。
 
 国からの交付金を年々削られる独立行政法人のやり方が正しいというわけでもないが、例えば、東京国立博物館のよく工夫された「商売」をみるに、なんらかのインセンティブは必要かもしれない。

 プーチン政権のロシアではエネルギー企業が国有化され、こうした企業からの収益が国家収入の半額を占めている。外資に乗っ取られるのではなく、政府が国の資産を管理するという発想自体は、国益を守る観点から正しいのだろう。

 ただ長年続いた社会主義を脱却して、より効率的な業務を行うには至っていないのかもしれない。その状況を見た米国の財界人が「オレたちならもっとうまくやれる」と思い、バイデンにロシア乗っ取りをけしかけているのだろうか。

 たしかにプーチン大統領は米報道番組のインタビューで、なにが米国の強さだと思うかと聞かれて「創造性」だと答えている。ロシアでは多くの組織が多摩動物園のような経営をしているのかもしれない。
 
 ただし、それが悪いとも一概には言えない。
 
 国立博物館ではポンペイ展と全ての平常展の抱き合わせ販売で入場料2,100円。コスパとしてはいいかもしれないが、では全ての展示を見られる時間とエネルギーのある人がどれだけいるだろうか。ポンペイ展のみ1,000円程度で見たいという人のほうが多いかもしれない。

 食事は屋台とオークラの二択というのも、貧富の差が明らかで生々しい。多摩動物園のようにレストランはしょぼくていいから、入場券は600円(ちなみに民間経営のアドベンチャーワールドは4,800円)でピクニックをできたほうがいい、という考え方もあるだろう。

 もし多摩動物園が民営化されれば、おそらく入場料は高くなり、レストランの選択肢が増える代わりに、その商売を妨げないよう飲食物の持ち込みは禁止になることも考えられる。現在のように小学生までの子供と都内の中学生は無料ということもできなくなり、敷居が高くなるのも容易に想像できる。

 つらつらと考えるに、そう言えば理想的な公的施設がある。東京体育館だ。東京都の外郭団体が運営しているが、現在では民間のスポーツジム会社・ティップネスに業務委託している。

 東京オリンピックにも使われた最高レベルのスポーツ施設で、水深170センチの本格的な50メートルプールのほか、筋トレ器具、風呂、ドライヤー、体重計、マッサージチェアなども揃っている。使用料は2時間半で600円。素晴らしい内容でこの値段はかなり良心的であり、東京都が相当な負担をしているのだろう。

2022年3月21日月曜日

書評「プーチン 人間的考察」

  ついに622ページの大著を読了。図書館でざっと読んでメモを取ったあとに本書を購入、アンダーラインや書き込みをしつつ全編を熟読した。

  これによってプーチンに関するいくつかの疑問が解けた。多くの方も同じ疑問を持っていると思うので、得られた答えと感想を述べていきたい。

1)プーチン大統領がこれほど長く在任している理由

 プーチン大統領の在任年数は、2008~2012年の首相時代を含めると22年にも及ぶ。過去にもソ連のスターリン書記長は30年在任し、ロシア国民が強い指導者と社会の安定を求める事情とメンタリティがあると、著者は言う。

 世界最大の国土と恵まれた資源(天然ガスの埋蔵量で世界1位、石油、ダイヤモンド、鉄鉱石などもトップクラス)を守り、多様な民族をまとめていくには、カリスマ性のある強いリーダーが必要だ。

 日本のように四方を海という緩衝地帯に囲まれ、天然資源に乏しいため働かざるを得ず、太古の昔から続く世襲制の天皇を頂点として、同質的で自然とまとまる農耕社会とは訳が違う。

 戦争が起きる理由はいつも同じ=資源や領土が欲しい。そうして国民を食わせていける。野生のライオンと一緒。米国という国は原住民から土地を奪って成立した。世界制覇もその延長線上にあるのだろう。

 こうした外的と戦うシンボルとして、マッチョな指導者が存在する。

 プーチン大統領は国民投票をへて昨年4月に憲法修正を行い、あと2回再選に立候補できることになったため、最長で2036年まで在任可能。その頃には84歳(公式発表とは異なる生い立ち説によれば86歳)となる。

 ソ連時代のスターリン書記長の在任30年を上回り、36年の長きに亘ってロシア連邦のトップの座に君臨しつづける。前述したロシア事情に加えて、プーチン氏はとりわけ権力欲が強いとする見方が多いが、著者の見解は異なる。

 プーチンは他人を信用しない性格のため、側近は自分がよく知っている人物で固めている。同郷のサンクトペテルブルク出身者、柔道仲間、KGB時代の同僚である。プーチンは資源・エネルギー関連企業を国有化し、経営者はこうした知り合いが占める。

 この狭い世界では賄賂が日常化し、プーチン氏は欧州一の金持ちと言われる。自分が最高権力者のうちは汚職の罪にも問われないが、大統領を辞任した場合には、後任者による責任追及がはじまるだろう。そうすると財産は没収され、国外に追放されるかもしれない。

 プーチン自身、大統領就任後に財界人ベレゾフスキーを追い出した。彼の所有するメディアがプーチンに批判的な報道を行ったからだ。ベレゾフスキーは無名だったプーチンを担ぎ出し、エリツィンに紹介した人物である。KGB出身の官僚であれば、ベレゾフスキーを含むエリツィン一味の言うことを聞き、守ってくれるだろう、という思惑だった。

 だがいったん大統領として最高権力を握れば、自分のやりたいように物事を進められる。邪魔者には去ってもらう。前任者の息のかかった人物は面倒だ。こうした「上級管理職あるある」はどこでも起きる。

 つまり、プーチン大統領が後継者に席を譲ってしまえば、自分がエリツィン一味に対して行ったようなことが起きてもおかしくない。韓国の歴代大統領の行く末にも通じるものがあるかもしれない。

 さらには大統領でなくなれば今よりも警護が手薄になるだろう。内外ともに敵の多いプーチンにとって、自分や家族の身の安全を守るためにも大統領でいつづける必要がある、と著者は分析する。

 これに加えて、プーチン大統領が演説やインタビューで述べているように、ロシアの安全保障とロシア系民族の統合を自らの歴史的使命と信じているのだろう。

2)健康の秘訣

 古希を迎えるとは思えないほどプーチンは若々しく見える。戦争という最高のストレス状態にありながら、いつもと変わらないエネルギッシュな様子は驚異的である。

 
 彼はモスクワ郊外の公邸にいることが多い。 完全な夜型で午前2時過ぎまで働くが、朝は自然と目が覚めるまで眠り、目覚ましで起きることはない
 
 太字で下線を引いたとおり、これはメチャクチャ重要な点である。私自身の経験から言っても、健康にとって最も重要だと断言できる。つまり寝不足にならない、ということだ。

 これとは逆に不眠症ほど危険なものはない。私は前職でストレスのために眠れず、おかげで疲労困憊になり気力・体力がかなり落ちた。それが今では眠りたいだけ眠り、当時とは比較にならないほど元気になった。

 睡眠についで重要なのは運動である。プーチン氏は正午過ぎに起床、朝食後に公邸内のプールで泳ぐ。2時間泳ぐと書かれた記事もあるが、本書では「1,000メートルは泳ぐ」とする本人のコメントを引用している。
 
 私も定期的に泳いでいるが、自分のゆっくりなペースで30分に1,000メートルなので、マッチョな男性であれば1,000メートルは15~20分ほどだろうか。2時間とする記事はおそらく、マックスでそのくらい泳ぐこともある、ということなのだろう。

 いずれにせよ水泳は全身運動で関節への負担もなく、とくに中高年には理想的な運動である。長く生きていると、どうしても一定の箇所の筋肉をより使い、その一方であまり使わない筋肉が出てくる。テニス肘や五十肩はこうした筋肉使用の不均衡が原因となるが、水泳はまんべんなく全ての筋肉を使い、またジョギングやテニスのように膝や肘への負担もない。さらには水の中という日常を離れた環境でリフレッシュできる。
 
3)プーチンの権力基盤
 
 彼の主な支持層は軍人、警官、公務員、学生、年金生活者。ソビエト期の教育が尾を引いている中高年層。民主主義的な諸権利よりも、安定、秩序、規律を重視する人々。

 プーチンは2008~2012年にメドベージェフを大統領に据えて、自分は首相として傀儡政治を行った。メドベージェフ氏を選んだ大きな理由として、彼が162センチと自分(168センチ)よりもさらに低身長だった。これは冗談として言われるが、ロシアには「冗談にも一抹の真実がある」という諺がある。

 いやはや、メチャクチャおもしろい本だった。思わず感想を書いて著者に送ろうかと思ったが、木村氏はこのプーチン三部作を仕上げた翌年に他界している。
 
 次のロシア大統領選は2024年3月17日に行われる。同年11月5日には米国大統領選もあり、この混沌とした状況と選挙がどうなっていくのか、目が離せない。

2022年3月18日金曜日

文藝春秋と週刊文春の大きな違い

  現在発売中の文藝春秋に出ている「プーチンの野望」と題する記事は、最近読んだ日本のマスコミのロシア報道で最も質が高く、説得力のある内容だった。

 東郷和彦氏(元外務省欧州局長)と畔蒜泰助氏(あびる・たいすけ、笹川平和財団・主任研究員)の対談である。プーチン大統領が自らの歴史観について書いた論文の精査と分析、NATOとロシアとの経緯、今回のウクライナ侵攻とバイデン政権の外交政策との関係などを詳述し、日本の国益を守るための戦略的外交を提案している。

 両氏ともロシア駐在や留学の経験を持つ専門家だけあって、広範な情報源と深い分析が際立っている。同じ版元とは思えないほど、週刊文春の浅はかな報道とは対照的だ。

 今週号の週刊文春はプーチン氏の二人の娘やラブロフ外相による過去の日本観光の内容、プルシェンコの近況などセレブのうわさ話が中心で、ウクライナ危機に至った理由にはまったく触れていない。

 読者対象が文藝春秋はインテリ、週刊文春は大衆ということなのだろう。

 私にはどうでもいい話だが、元卓球選手の福原愛に関する週刊文春の記事では、彼女の不倫相手A氏の元妻B子を直接取材している。大手商社勤務のA氏が嘘つきの女好き、有名人好きであることはよくわかった。

 あまりにも下らなくて途中で読むのをやめてしまったが、こういう国内の有名人や世間について知るには、週刊文春は役立つ。

2022年3月15日火曜日

偕楽園で見頃の梅を堪能する

 今週から本格的な春が到来。日本三名園のひとつ、偕楽園へぶらりと出かけた。約100種類、3,000本の梅の木があり、全体的に7~8割は開花、満開の木もたくさんあり今が見頃だ。 


 中央線の特快で東京駅まで行き、常磐線の特急に乗り換える。成田エキスプレスや京葉線とは違い、中央線や山手線のホームから歩いてすぐ。

 
 周辺には最近新しくなった駅ナカの弁当屋、スーパーもある。


 昨秋に乗った「はちおうじ号」と同様、特急券はえきねっとで予約して100円引き(通常1,580円→1,480円)。指定した席に行くと緑のランプがついており、車掌が検札に来ることはない。


 すごくきれいな車両、平日昼間の下り列車でガラガラ。寒い冬が終わって春が訪れ、分厚いコートではなく、やや薄手のコートで十分。

 かすかではあるが、車内のどこからか口笛が聞こえる。いや、まさにそんな気分。だが中央線や山手線では実行に移す乗客はいない。常磐線は牧歌的で人間ものんびりしている。

 列車は丸ノ内のオフィス街を通り抜けて走り出す。さきほどゲットした弁当とデザートを用意。いかにも旅行という感じ。

 
 さすが高級スーパーでどれも上品な味。さて弁当ガラを捨てに行く場所だが、車内の見取り図がゴミ箱の場所まで明記されている。


 前述のとおり予約した席は緑、また空席は赤、まもなく予約客が到着する席は黄色のランプ表示となっている。指定券を買わずに乗車した客は赤の席に座り、車掌が来た際に清算する(車内料金は事前予約よりも割高)。この説明が上記表示のみならず、車内アナウンスで日本語および、その一言一句正確な英訳で流れる。


 いかにも日本的と思わせる効率性を重視した細かい指示だ。日本の役所や組織は細部まで正確な説明を旨とするが、とりわけ国土交通省はまさに圧巻と言えるほど、建築物の設計図のように細かい図式のパワポを得意とする。そうか、鉄道は国交省の管轄だよね、と妙に納得する。

 車窓から日清食品の工場が見え、カップヌードルから湯気のような煙?が出ている。


 東京駅から1時間21分で水戸に到着。


 偕楽園前の臨時駅もあるが、昨日は閉鎖されていたためバスで向かう。案内所で水戸駅と偕楽園の往復割引切符(400円)を売っているらしく、ICカード(片道231円X2=462円)よりもお得だという。だが案内所の場所がわからず、偕楽園行きのバスがすぐに到着したので、とりあえずICカードで乗車。
 
都道府県魅力ランキングにトラウマ

 さすが首都圏の県庁所在地、秋田や和歌山の田舎のように「バスは現金のみ」ということはない。ただ茨城県知事が不満を表明していたが、茨城は魅力ある都道府県ランキングのワースト1の常連となっている。これは地元にとってトラウマらしく、バスの車内アナウンスでも触れて「みんなで茨城を盛り上げていきましょう!」と呼びかけている。

 そもそも47しかない都道府県の魅力ランキングは残酷だとは思う。京都や北海道などの観光地が上位、北関東が下位という傾向にあるが、では全ての都道府県が観光に力を注ぐべきなのか? 

 関東平野は平坦な土地を生かした農業に適している。畑や田んぼが多くなれば、当然ながら遠くからわざわざ訪れる場所にはなりづらい。ブルーベリーやイチゴ狩りはありかもしれないが、コメ、ジャガイモ、キャベツ、トマトといった日常生活に密着した産品は〇〇狩りにはやや厳しい。毎日の食生活を支える自治体が「魅力的でない」と言われて憤慨するのは当然である。
 
 そうした憤りと負けん気もあるのだろうか。バスの車内では学習塾の宣伝が流れる。「東大医学部、早慶は〇〇塾、筑波と千葉も〇〇塾」とやや興味深いリストであり、この中に茨城大学は入っていない。
 
 バスでしばらく走っても商店街やオフィスビルが続き、ふつうの地方都市よりも大きいことがわかる。私個人の感想を言えば、名古屋を少し地味にした感じかもしれない。 

 20分ほどで偕楽園に到着。入口近くから梅の木があり、のどかな風景が広がる。
 

 こちらが案内図。線路の下側にある梅エリアは入場料300円、線路の上側は無料。


 兼六園と同様、偕楽園も県庁が運営しているため、良心的な入場料となっている。ちなみに偕楽園は「民と偕(とも)に楽しむ」という趣旨で、水戸藩第九代藩主の徳川斉昭(なりあき)が自ら構想、1842年に開園した。

 まずは線路の下側のエリアを散策。
 

学問に親しむと梅が咲く
 
 構内には「好文亭」という家屋がある。入場料は別途200円。


 徳川斉昭が文人墨客、家臣、領内の人々を集めて詩歌や慰安の会を催した。「好文」とは梅の異名で、晋の武帝の「学問に親しめば梅が咲き、学問を廃すれば咲かなかった」という故事にもとづいて斉昭が名づけた。
 
 自然豊かな茨城県らしく、「梅の間」「桜の間」「萩の間」など各部屋は植物にちなんだ名前がつけられ、それに対応した襖絵がある。


 高台にある上階の部屋からは周囲の風景を楽しめる。


自然とのユルユルな関係が魅力
 
 全体的に思ったのだが、偕楽園ではひとつひとつの木の剪定方法に、京都の寺や伊勢神宮のように考え抜かれた意匠は感じられない。まんまるの松、どちらか片方に偏った枝ぶりなど。


 そこに私が感じたメッセージは「自然とは制圧する対象ではなく、のびのびと存在するものだ」。

 うちの庭にも梅の木があるが、3月の花が咲く頃からGWまでに50~60センチほどの小枝がにょきにょきと生えてきて、放っておくと手に負えない大木になってしまう。自分でも手入れ可能な状態に保つためには、かなりの思い切った剪定が必要になる。

 さすがに3,000本もの梅の木があれば、とにかくこの繁殖力の旺盛な植物が、自らの首を絞めないように剪定するのが精いっぱいで、ひとつひとつの木の形にまでこだわっていたら大変なことになる、ということかもしれない。

 そして結果的には、いい意味でのアバウトさが偕楽園には感じられる。常磐線の車内でどこからともなく聞こえてきた口笛ともつながり、まったりと川面でたそがれている鳥にも通じるものがある。


余裕があれば無料の公園もお勧め
 
 線路の上側の無料エリアはこんな感じ。線路の下側よりも大きな木がある。


 まだ小さい木もたくさん花を咲かせている。


常磐線と中央線の微妙で大きな違い
 
 帰りの特急列車は水戸を出ると停車駅は上野だけで、東京まで1時間15分。行きよりも結構混んでいて「コロナ対策のため会話はお控えください」というアナウンスにもかかわらず、車内に丸聞こえで会社の噂話をしている中高年男性2人組がいる。

 その一方で東京始発の通勤快速では、東京・新宿間では女子高生がおしゃべりをしていたものの、新宿を過ぎると満員にもかかわらず、というかだからこそ、車内はしんとしている。
 
 吉祥寺を出てから急病人が出て、本来は止まらない武蔵境で停車して救護。その影響で10分以上の遅れが出たため、通勤快速がただの快速になってしまい、国分寺から先は各駅に停車して後続の電車にも大幅な遅れが出た。
 
 この一連の出来事にもかかわらず、乗客は全員まるで何事もなかったのように何も言わない。もし常磐線の特急で同じことが起きていたら、あのうるさい中高年男性が黙っているとは思えない。

 同じ関東でも、微妙に大きな違いがあるものだ。