ついに622ページの大著を読了。図書館でざっと読んでメモを取ったあとに本書を購入、アンダーラインや書き込みをしつつ全編を熟読した。
これによってプーチンに関するいくつかの疑問が解けた。多くの方も同じ疑問を持っていると思うので、得られた答えと感想を述べていきたい。
1)プーチン大統領がこれほど長く在任している理由
プーチン大統領の在任年数は、2008~2012年の首相時代を含めると22年にも及ぶ。過去にもソ連のスターリン書記長は30年在任し、ロシア国民が強い指導者と社会の安定を求める事情とメンタリティがあると、著者は言う。
世界最大の国土と恵まれた資源(天然ガスの埋蔵量で世界1位、石油、ダイヤモンド、鉄鉱石などもトップクラス)を守り、多様な民族をまとめていくには、カリスマ性のある強いリーダーが必要だ。
日本のように四方を海という緩衝地帯に囲まれ、天然資源に乏しいため働かざるを得ず、太古の昔から続く世襲制の天皇を頂点として、同質的で自然とまとまる農耕社会とは訳が違う。
戦争が起きる理由はいつも同じ=資源や領土が欲しい。そうして国民を食わせていける。野生のライオンと一緒。米国という国は原住民から土地を奪って成立した。世界制覇もその延長線上にあるのだろう。
こうした外的と戦うシンボルとして、マッチョな指導者が存在する。
プーチン大統領は国民投票をへて昨年4月に憲法修正を行い、あと2回再選に立候補できることになったため、最長で2036年まで在任可能。その頃には84歳(公式発表とは異なる生い立ち説によれば86歳)となる。
ソ連時代のスターリン書記長の在任30年を上回り、36年の長きに亘ってロシア連邦のトップの座に君臨しつづける。前述したロシア事情に加えて、プーチン氏はとりわけ権力欲が強いとする見方が多いが、著者の見解は異なる。
プーチンは他人を信用しない性格のため、側近は自分がよく知っている人物で固めている。同郷のサンクトペテルブルク出身者、柔道仲間、KGB時代の同僚である。プーチンは資源・エネルギー関連企業を国有化し、経営者はこうした知り合いが占める。
この狭い世界では賄賂が日常化し、プーチン氏は欧州一の金持ちと言われる。自分が最高権力者のうちは汚職の罪にも問われないが、大統領を辞任した場合には、後任者による責任追及がはじまるだろう。そうすると財産は没収され、国外に追放されるかもしれない。
プーチン自身、大統領就任後に財界人ベレゾフスキーを追い出した。彼の所有するメディアがプーチンに批判的な報道を行ったからだ。ベレゾフスキーは無名だったプーチンを担ぎ出し、エリツィンに紹介した人物である。KGB出身の官僚であれば、ベレゾフスキーを含むエリツィン一味の言うことを聞き、守ってくれるだろう、という思惑だった。
だがいったん大統領として最高権力を握れば、自分のやりたいように物事を進められる。邪魔者には去ってもらう。前任者の息のかかった人物は面倒だ。こうした「上級管理職あるある」はどこでも起きる。
つまり、プーチン大統領が後継者に席を譲ってしまえば、自分がエリツィン一味に対して行ったようなことが起きてもおかしくない。韓国の歴代大統領の行く末にも通じるものがあるかもしれない。
さらには大統領でなくなれば今よりも警護が手薄になるだろう。内外ともに敵の多いプーチンにとって、自分や家族の身の安全を守るためにも大統領でいつづける必要がある、と著者は分析する。
これに加えて、プーチン大統領が演説やインタビューで述べているように、ロシアの安全保障とロシア系民族の統合を自らの歴史的使命と信じているのだろう。
2)健康の秘訣
古希を迎えるとは思えないほどプーチンは若々しく見える。戦争という最高のストレス状態にありながら、いつもと変わらないエネルギッシュな様子は驚異的である。