その自分が「日本の報道機関は西側メディアに付和雷同でともに信用ならん」といった発言をして、お前は何なの?と思う向きもあるかもしれない。
そこで補足+メディアリテラシーについて語ってみたい。
日本と西側メディアの関係を上記のように表現する専門家はめずらしくない。主に保守系・独立系のYouTubeチャンネル、ネット、週刊誌などにみられる。
私の発言については「日英米マスコミの政治・国際情勢の報道は重要な事実が抜け落ち、偏向も多いので、注意したほうがいい」と補足したい。
前述のメディアで私が担当した内容はライフスタイル、生活情報、科学、健康、就職活動といった分野である。
新型コロナ関連では大手マスコミの報道はかなりあやしいが、私が取材をしていた頃の医療報道はまともだった。
さらに言えば、日経新聞では記事が出るまでの間に記者自身が事実関係を3度チェックしなければならず、その旨を注意喚起するポスターが職場に貼られている。
正確で中立公平な報道を確実にするため、記者が書いた記事はデスク(全体の流れや整合性をチェックし、記事をより読みやすくする)→整理部(見出しとレイアウトをつけるとともに、記事の整合性をさらにチェック)→校閲(日本語表現、漢字、日経表記による統一を確実にする)→部長(レイアウトで組んだ記事の最終確認)と何重ものチェックを受ける。
このプロセスで政治的な圧力を受けたり、広告主の意向を忖度するように言われたことは一度もない。このため、少なくともライフスタイル、生活情報、科学、就職活動といった分野の日経記事については、現在でも私は信頼している。
では政治や国際情勢の報道、日経以外のメディアではどうだろうか。
週刊文春は大手新聞が踏み込まない有名人の生活やスキャンダルでは驚くほどの取材力がある。例えば、神田沙也加さんの死亡に関しては、周囲の人々への詳細な直接インタビューで真実に迫った。
しかしながら、現在発売中(3月10日号)のプーチン大統領に関する記事はかなりお粗末としか言いようがない。
まず第一に彼の生い立ちについては根本的に間違っているだろう。昨日紹介したように、ロシア専門家の学者やドイツ紙の詳細な記述と分析を読めば、一般的に信じられている公式発表は事実とは異なると言わざるを得ない。
第二にロシアの開戦目的と理由について、大スクープをプーチン自身が語っているにもかかわらず、完全無視である。
発行部数65万部で影響力のある週刊誌としては、記者の身の安全も考えて、あえて世間に流布しているデマにとどめているのかもしれない。真実を語ることで怒らせてしまう相手はクレムリンやワシントンであり、芸能事務所よりもはるかに怖い存在なのだろう。
このため記事の主な目的は事実を伝えることではなく、このユニークで類まれなインパクトのある権力者に関して、愛人や処世術など下世話なあることないことを書き立てることだ。それによって、コロナ禍でマンネリ化した生活に飽き飽きしている読者に、激辛のポテチとも似たちょっとした刺激を提供したいのだろう。
こうして考えていくと、政治や国際情勢に関しては、やはり大手マスコミは根本的なレベルで当てにならない。書籍やマイナーなサイトといった、読者数が少なく世間的な影響が限定的なメディアであれば、当局者も大手マスコミにほど神経をとがらせず、結果として本当のことを言える。