2021年3月2日火曜日

「TOEIC赤本」が韓国だけで発行されている驚くべき理由

 「国内教育+大人の海外体験」の方々は偏差値秀才が多いと思います。勤勉なサラリーマン家庭で育ち、国立・早慶レベルの大学に進学。有名企業や官庁に就職して、勤務先の選考や奨学金にパスして大学院留学、海外駐在という感じです。

 このタイプの方が試験対策と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、赤本でしょう。まずは過去問でどんな試験なのかを理解し、自分の弱点を知って対策を立てる。全てはそこから始まります。

 TOEICでも同じこと。しかし「赤本」が韓国だけで発行され、日本には「問題集」しかない、ということをご存じでしょうか? 

 TOEIC主催者のETSは、日本では「公式問題集」しか発行していません。本試験に近い内容で同じナレーターを使っていますが、模試2つで定価3300円。その一方でETSが韓国で発行している過去問はListeningとReading各10回分がそれぞれ3200円。

 つまり日本では公式模試1回分が1650円であるのに対して、韓国では本物の過去問が1回640円で売られている、というわけです。TOEIC学習者の界隈では知られた事実で、アマゾンジャパンでは韓国発売の過去問も手に入りはします。ただ解説が全て韓国語なので、不正解の理由を自分で理解できる上級者が模試の数をこなす、といった使い方になります。

 この不公平さはどうやって生まれたのでしょうか? 

 TOEIC満点を100回近く取っている英語講師、「もりてつ」こと森田鉄也さんによれば、こうです。韓国の秀才たちも、まずは過去問を理解するのが重要という認識を持っています。そこで彼らは数人でグループを組んで同じ本試験を受け、各パートを丸暗記してシェアする、ということを始めた。これがどんどん広がったのでETSの公式模試が売れなくなり、ETSは仕方なく過去問を韓国だけで発行することにした、ということらしいです。

 ちなみにETSはなぜ過去問を出し惜しみしているかと言えば、本試験で過去問を使い回ししているから、だそうです。企業の団体主催ではまったく同じ過去問、もしくはいくつかの過去問の組み合わせらしいです。なので韓国発売の過去問は本試験に登場する、ということはないでしょう。

 日本でもTOEICer(「トーイッカー」と読む、TOEIC講師やTOEICマニアのこと)たちは、本試験の直後に講評や反省会の動画をYouTubeにアップしています。ただ日本のTOEICerたちは独立心が強いのか、個人でやっている人が多く、韓国のように徒党を組んでしらみつぶしに覚える、ということはしていません。

 一人の記憶力には限界があり、「今回は普通」「やや難」と言われても、あくまで主観に過ぎず、さほど参考にはなりません。試験を受けた者同士が、あーだったよね、こうだったよね、あれはこうでいいんだよね、〇〇っていう問題はどうした、みたいなマウンティングもしくは傷をなめ合う場にしかなってない印象です。ただ、同じTOEIC本試験を受けた個人的な友達なんてふつうはいませんので、それでも一定の意味はあるかとは思いますが。。

 それで思ったのは、良くも悪くも韓国の受験者は覚悟が違います。それによって韓国では過去問発売に至り、のんびりしている日本の受験者も恩恵を被っているので、結果としてはありがたいです。日本で「赤本」が発売されたら、もっとぼったくられる気もしますしね。