2020年12月13日日曜日

わかりやすさで勝負するダイソン

  ダイソンといえばデザイン性が高く、セレブな家電というイメージだ。

 7年前に同社の掃除機を買ったのも、上流な暮らしをする大学先輩に勧められたからだ。

 カーペットについたペットの毛を一網打尽に吸い込み、透明な構造でホコリを見える化した掃除機の写真を見せてもらい、かなりインパクトがあった。ゴミをあえて可視化するという発想は目新しく、ダイソンがパイオニアだった。私は原因不明のアレルギーに悩まされていたため、「とにかくハウスダストを根絶しよう!」と、当時の最上位機種DC48を約6万6000円で買った。

 吸引力の強さに驚き、フローリングも掃除機をかけただけでピカピカになる。だが2カ月後に電源が入ったり入らなくなったりを繰り返すようになった。初期故障かと思いカスタマーサービスに連絡すると、フィルターにホコリが詰まっていたのが原因だった。通常の使用ではフィルター掃除は年1回でよいが、古い掃除機が吸い込めなかったホコリを一気に片付けたため、1年分のホコリがたまっていたということらしい。

 7年活躍した掃除機だが、先日突然に本体の電源が入らなくなった。カスタマーサービスに電話したところ、本格的な修理が必要となった。2年間の保証期間は過ぎているので費用が発生するが、あらゆる故障を一律2万2000円(送料込み)で直すという。モーターが壊れていれば交換し、必要があれば付属品も新品に換える。

 さらに興味深いことに、こうしてカスタマーサービスに連絡してきた顧客限定で新品の大幅割引も行う。修理に出して詳細を聞き、やっぱり新品に買い替えたいとなったとしよう。現在の最上位機種CY29FFを4万7850円で買うことができ、古い掃除機はダイソンが無料で引き取る。この価格は家電量販店や楽天よりも約9000円~1万5000円安い。

 掃除機の仕事ぶりの可視化、修理に出す前からわかる修理代、顧客を待たせず全ての質問にすぐに答えられる電話対応、得意客への明確な優遇措置。わかりやすさがダイソンの真骨頂だ。

 問題は2万2000円を出して修理に出すべきか。正直、この金額で同等かそれ以上の掃除機もあるのではないだろうか。実際、DC48の新品が現在は2万8000円程度で販売されている。

 もっと言えば、押入の奥にあり家族が買ったと思われる古い掃除機のほうがダイソンよりも吸引力が強かったのだ。だが残念なことに、このサンヨー製掃除機にも、フタが開かないという不具合が間もなく発生。掃除機の吸引能力を示す吸込仕事率は、ダイソンDC48が170W、サンヨーが350Wだった。

 ただ実際の吸引力には、ブラシの構造や床質などの要素も関係する。イギリス本社のダイソンは屋内にも靴で入る西洋の習慣に対応し、特に絨毯に入り込んだ砂やホコリの吸引に優れている。その一方で不織布のような素材のカーペットでは「あれっ?」というほど糸くずの取りこぼしがあり、サンヨー掃除機はこうした細かいチリもガンガン吸い込んでいだ。やはり根本的なパワーは重要なのだろう。

 現在、吸込仕事率が最も高い掃除機は日立製品で670Wとなっている。この機種は本体重量が3.7kg、一方で650Wの機種もあり3.3kgとやや軽い。ほぼ1日かけて調べ上げたところ、CV-KP300Gという昨年発売された機種が最もコスパがよさそうだ。アマゾンで2万3781円。ダイソンDC48を修理に出す値段とあまり変わらない。

 吸込仕事率650W、本体重量3.3kgの機種はいくつかあるが、CV-KP300Gはブラシの性能が下位機種より優れている。「スマートヘッド」というもので、床の種類を感知してパワーを自動的に調節するため、吸引力が強すぎてブラシを動かすのが大変という事態を避けられる。

 この機種よりも6300円ほど安い機種CV-PF90のブラシは「ごみハンターヘッド」と呼ばれ、「スマートヘッド」よりも床の感知能力が低い。CV-PF90のレビューを見ると操作性に不満を持つコメントも散見される。その一方でCV-KP300Gは5点満点中1点のレビューはゼロ、2点は1つあったがコメントなし。3点以上のレビューの不満点は付属品の種類が少ない、やや重いなど、掃除機の性能に関するものではなかった。吸込仕事率500W以上の製品でも吸引力が足りないとするレビューもある一方で、CV-KP300Gのレビューでは吸引力への不満は皆無だった。全体として吸引力の強さと操作性のよさを絶賛するコメントが目立つ。

 CV-KP300Gより上位の機種もあるが、その差は付属品に小さいブラシがついているか、いないかの違いだけ。結論として、パワーと操作性でCV-KP300Gがコスパ最高だろうと判断し、アマゾンの注文を確定した。

 こうした一連の検討に丸1日を費やした。今は時間があるので可能だったが、忙しければ「スマートヘッド」と「ごみハンターヘッド」の違いまで細かく調べることはできなかっただろう。ダイソンの最上位機種を優待価格で買っておしまいだったかもしれない。

 日本企業の家電の特徴として、いろいろと優れた機能が数多くあり、かわいい名称がついているものの、それが何を意味しているのかがわかりにくい。取扱説明書をダウンロードし、あらゆるレビューを熟読してようやく完全に理解できる。エンジニアが日夜努力してコスパ最高の製品を作り上げても、わかりやすさではダイソンに負けてしまう。