モスクワのクレムリン(大統領府)に武器庫という博物館があり、武器だけでなく様々な宝物が陳列されている。
歴代皇帝が受け取った贈り物のコーナーが興味深い。欧州各国から贈られた装飾用の鉄製皿があり、全て製造したのはドイツだという。さらに興味深いことに、ガイドいわく「フランスからの贈り物はない」のだと。
ええっ、フランスと言えば外交で有名なのに。Demarche(外交の伝達), Chargé D'affaires(臨時代理大使)といったフランス語は英語でも日常的に使われる。
「だからこそ、フランスは贈り物をしないことで有名なんです」とガイドは言う。どのくらいあてはまるのかわからないが、少なくともロシア人ガイドの発言は興味深い。
そう考えてみると、日本人の女性は贈り物をしすぎなのではないか。バレンタインのチョコレート、毎日のお弁当、来客へのお茶など。なにかを贈られて嫌な気持ちになることはないものの、それによって贈り主を尊敬することになるかと言えば、逆効果なのかもしれない。
お歳暮やお中元は目下の者が目上の人に贈る、あるいはお世話になっている方へ御礼の気持ちを表す、といった意味合いがある。このため理由も特になく贈り物をすれば、相手よりも自分は一段下だというメッセージを自ら送ることになるのかもしれない。
ある知り合いの米国人夫婦がいる。夫は高学歴なハンサムで、妻のほうは資産家の出身だがごく普通の容姿である。だが夫のほうが妻にぞっこんで、いつでも妻の自慢話に花を咲かせる。
その妻は専業主婦だが決して夫の弁当を作らない。それどころか、ランチタイムにはコンビニのおにぎりを買って行き、一緒に食べる。「だって夫はコンビニのおにぎりが好きだから。日本人の女性に言ったら、すごく驚かれました。ええっ、ダンナさんにお弁当作らないの?」と。。
私が思うに、彼女が一生懸命になって愛妻弁当を作っていたら、これほど夫に愛されてはいないのかもしれない。あえて贈り物をしないからこそ、自分が有利な立場に立てる。日本人女性の地位が欧米と比べて低いのは、こうしたことも影響しているのではないか。