2020年5月31日日曜日

米国の暴動と差別(1)

 米国ミネソタ州で警官が黒人男性を取り押さえ、動かないよう首を押さえつけて窒息死させた。この映像がネットで広がり、全米各地で人種差別反対のデモや暴動に広がっている。

 人種差別反対のデモは理解できるが、なぜ地元商店や車への放火にまでエスカレートするのか。日系米国人のミュージシャン・井上ジョー氏の解説がわかりやすい。

 米国では有色人種への差別は日常茶飯事だと井上氏は感じている。件の映像を見て「またか」と思った人は多い。そんなたまりにたまった鬱憤が爆発した。大勢として黒人はお金持ちになるアメリカンドリームへのルートから外され、貧民街に押しやられている。平和的なやり方では現実は変わらず、結果として暴動に出るしか支配者を変える方法はない。だからと言って罪のない商店をターゲットにするのはおかしいが、逆に言えば、そんな狂った暴挙に出ざるを得ないほど米国における差別は根深い。

 米国の雇用平等法では、人種、性別、出身国、宗教、性的趣向などによる差別を禁止している。だが、この法律が厳格に施行されているわけではない。

 "Corporate Confidential"(邦訳「外資系キャリアの出世術」)という本はそうした現実を生々しく描いている。組織の上層部は説得力のある言葉で表向きには差別禁止を強調するが、現実は真逆である。いくら理不尽な目に遭い、差別を受けても、雇用平等法に基づく苦情申し立てをしてはならない。組織や上司に盾突いたら、違法にならないよう全く別の理由で追い出されるのがオチである、と人事に精通した著者は言う。

 オバマ大統領を除き歴代大統領は全員が白人男性で、米国の組織や企業の経営陣も大多数が白人男性である。広報部長や雇用平等部長だけが女性や有色人種、というのも「あるある」だ。私が聞いた話では、ワシントンDCには白人男性しか入れないシガーバーがあり、本当の情報はそうした場所で流れている。

 こうした現実に憤りを感じ、変えようとする白人もいる。だがややこしいことに、組織のイメージ向上のため女性や有色人種を採用すると最初から決めていたとしか思えない人事もある。

 そうして白人男性が逆差別を受けることもある。今回の暴徒にはマスクや防護ゴーグルで顔を隠した白人男性もいるようだ。