EU議会がブリュッセルとストラスブールに分かれていることで生じる交通費などの諸経費だけで年間1億ポンド(最近の下落したポンド・円レートでも年間135億円)、日常生活のあらゆる場面に課された無数のEU法規制(キュウリの長さ、掃除機の強度など)、ECで法案を審議する委員会は非公開で行われ、意思決定や責任の所在が不明確。。。
そうしたEUの官僚組織や支配の構造を紹介したドキュメンタリーや映画を見ると、それだけでもEUにうんざりした人々の気持ちはわかる。
イングランド地方都市出身の方いわく、EU規制はそのレベルにとどまらない。なんとイギリスのEU加盟後、クリスマスに「Merry Christmasと言ってはならない」というお達しが会社で回されたという。イスラム教信者はクリスマスをやらないので"Happy Holidays"と言うようにしましょう、と。
「イギリスはキリスト教国なのに、どうして我々の国に後から入ってきた移民のために、自分たちの伝統的な挨拶の仕方まで否定されるのか。離脱に投票した人々はみな、そうした怒りを共有している。統一市場よりもっと重要な精神性に関わる問題だ」と彼女は言う。
もし「アジア連合」なるものが出来たとして、同じような規制が適応されれば、「中国は春節を祝い、インドネシアはクリスマスも関係ないし、みんなで『幸せな休暇を』と言うこととし、よって『明けましておめでとうございます』と言わないようにしましょう」といったことになる。日本人にとって、この大切な年中行事の挨拶を言うなというのは、我々のほとんどが耐えられないのではないだろうか。
メディアがそうしたことを伝えていないのは、おそらくpolitical
correctnessによるものだろう。もちろん差別的な発言はよくないが、ここまでくると逆にpolitical
incorrectness、言論・表現の自由の侵害としか言いようがない。米国大統領候補が「Political
correctnessなんてやってられない」と言うのも無理がない気がしてくる。
それで思い出したのだが、1999年に米国留学してニューヨークで迎えたクリスマスのとき、大学関係者からのメール、テレビコマーシャルなど全て"Happy Holidays"と言っていた。あれ、中学の英語で出てきたMerry Christmasは使わないんだな、ニューヨークにはユダヤ系住民が多く、彼らはクリスマスではなくハヌカを祝うので、汎用性のある言い方をあえてしているんだろう、と思っていた。移民国家アメリカならではの言い方と解釈していたのだが、イギリスまでEU規制によってそうなっているとは知らなかった。
また、かつてのイギリスでは週40~60時間働くのも当たり前だったが、EUの人権規定で週38時間労働が導入されたことで、イングランド地方都市の彼女の会社では突然残業してはいけないことになったという。
「終業時刻が午後5時となれば、仕事が終わらなくても、きっかり5時で帰らなければならなくなった。以前は仕事のきりが悪ければ6時まで働くこともあったが、今やイギリス人の勤勉性は失われた。日本の銀行のロンドン支店でも、最近の市場混乱の対応で日本人社員は夜10時まで帰れなかったのに、イギリス人社員は5時でさっさと帰っていたとか」
2010年にロンドンで生活しはじめた頃、大学などの共用トイレで例えば7つトイレがあるうち、3つはいつも故障中、図書館のプリンターも5つあるうち3つは故障中といったことで、あらゆるサービスの質の悪さ、物事がきちんと進まないことに驚いていた。だがイギリス人の友人は「カスタマーサービスは以前はよかった」と言っていたのを思い出し、腑に落ちた気がした。
日本の長時間労働は問題である一方、世界一素晴らしいサービスの質を維持してきた。イギリスと同じように週38時間ルールが突如として日本に導入されたとしたら、相当の混乱を生むだろう。ドイツ人の効率性の高さには驚くばかりだが、世界中の誰もがドイツ人なみの効率性を突如として持てるわけでもない。
そもそも、ドイツでノー残業や企業の福利厚生を導入したのはヒトラーであり、それによって民心を獲得していった歴史がある(「NHKスペシャル 新・映像の世紀「第3集 時代は独裁者を求めた」参照。こちらにサマリーもあります。)
ボリス・ジョンソン氏が「ドイツはヒトラーの代わりに、今度はEUでヨーロッパを支配しようとしている」という「失言」をしたと伝えられているが、あながちウソではないのだ。