2016年2月19日金曜日

ミニマリストとセレブの狭間で

「もう買いたいものは何もないね」――両親は還暦頃からよく言っていた。実際、家の中は物であふれ返り、それ以上物を買ってもしまっておく場所もなかった。戦中戦後の物資不足を経験した世代によくある光景のようである。

 最近ではミニマリストとか断捨離という言葉が流行り、極力ものを置かない、買わない生活もトレンドとなっている。「屋根ひとつ お茶一杯」という本は小さな家に最小限の物を選んで置くことで、自由で豊かな暮らしができると説く。

 その一方、ヨーロッパのお城や宮殿に行くとすごいなと思う。ベルサイユ宮殿シャンポール城エルミタージュ美術館、さらにはカリフォルニアのHearst Castleは物質主義の権化といえる。「〇〇はXXという目的のために部屋を設けてこう使った」とか「この希少なYYはZZから特別に取り寄せたものである」などとガイドから聞いて圧倒される。

 大多数の人々はミニマリストとセレブの狭間で過ごす。そして中年以降になると、よりミニマリストに近づくような気がしなくもない。

 私は以前ショップチャンネルというテレビショッピングにはまっていた。 つい見てしまい、ネックレスや健康機器、バッグなどを注文する。それがいつの頃からかほとんど見なくなった。最近ではデパートも用件が終わればさっさと帰宅する。

 国内旅行はもともと好きではなく、海外も主なところはだいたい行った。この頃は10時間以上のフライトはきつくなり、ビジネスクラスでないと体が持たない。そうするとついシャンパンやワインを飲み、食事の量も相当多く、動かないのでブタになってしまう。

 クラシック音楽を聴くのも、選び抜いたハイエンドのスピーカーでベルリンフィルの演奏を自宅で堪能していたほうが、その辺のオーケストラの生演奏よりはるかに満足できる。

 ネットで音楽や面白い情報に容易にアクセスできるようになったことも、ミニマリストへの流れを加速しているのかもしれない。