2018年1月23日火曜日

書評 Deng Xiaopin and the Transformation of China

 年末年始に読み始めた本書をようやく先日読了した。

 昨年夏にアマゾンのレビューで高評価を得ているのに興味を持って入手したが、大判で5センチあまりの厚さに圧倒され、ほんの少し読んでそのままだった。年末のある出来事をきっかけに、鄧小平のような人物ならこういう場合どうしたのだろうかと、思い出した。

 東アジア研究の大家である著者が10年の歳月をかけて数多くのインサイダーへのインタビューや膨大な資料をもとに、鄧小平の仕事のやり方、考え方を臨場感あふれる書きっぷりで詳細にまとめあげ、読者はまるで鄧小平と一緒に働いているかのような感覚を味わえる。

 結果として、知りたかった答えは本書から得られた。そして鄧小平が部下に相談されて示した回答、彼のやり方をこの数週間サルまねしたところ、全てがうまく行くようになった。

 それにしても毛沢東は究極のモラハラ上司といえる。それと比べたら、自分の職場の人々はみな天使のように思えてくる。

 わからない単語は全て調べ、本書の内容は100%理解した。数分後ごとに驚愕、もしくは腹の皮がよじれるほど笑うことの連続だった。 そうした箇所で立ち止まり、深々と考えてしまい、自分の仕事や人生と比べてみた。

 中国共産党は大きな組織の会社と似ている。トップは選挙で選ばれるわけではなく、権力闘争で勝ち残った人物が君臨する。人間は一人ひとり価値観、判断基準、行動様式が異なるので、全員のコンセンサスを得るのは不可能である。そうした中、組織として物事を決定し、ある方向に導くには洗練された統率力が必要となる。そうした統率力は肩書きがあるから自動的に生じるものではない。

 鄧小平が本当に自分の仕事を始めたと言えるのは72歳、そして引退後の87歳で行った最後の「大仕事」が1990年代以降の驚くべき毎年GDP10%台の成長をもたらし、上海・浦東地区の開発を実現させた。

 1980年代後半のインフレが天安門事件のきっかけの一つとなったが、それでもロシアや東欧のようなハイパーインフレには至らず、マクロ経済をコントロールできたのは陳雲や朱鎔基の功績が大きい。

 外から見れば鄧小平はワーカホリックの権化のようだが、実はフランスで勤労学生として働いていた10代の頃から、身長152センチという小柄な自分の体力を認識して注意深く仕事を選び、残業や長時間労働をほとんどしていない。

 先日、コマツ元社長の安崎暁氏が自ら開いた「生前葬」で、出席者に本書を推薦していたという。私は中古本で入手したのだが、表紙をめくった後の白いページに以前の持ち主が「ビル・ゲイツから勧められた」と書いていた。