2018年1月26日金曜日

50代をどう生きるか?

 最近は元気ハツラツな中高年も多いが、個人的な感想を言えば50代になるとガクッと疲れてくる。私は40代で二つ目の修士号を取りにロンドンに留学したが、今振り返ればよくあんな元気があったなと感心する。

 老いや病気について一般向けの著書を数多く出版している医師の中村仁一氏いわく、人間もほかの生物と一緒で繁殖を終えたら死に向かう。女性は排卵しなくなった後、男性もだいたい同じ年齢でその時期を迎える。

 それが自然なプロセスなのだが、最近の老人は老いを認めたくないばかりに、老いを病気とすり替え、病気なのだから、よりよい病院、よりよい医師にかかれば治ると信じている。

 テレビをつければグルコサミン、ヒアルロン酸などサプリのオンパレード。どんな薬でもプラセボ効果はあるが、あるサプリを飲んだからひざが痛いのが治るわけがないのだという。

 人間ドックや健康診断でどこも悪くない人を一斉にチェックするのも、日本だけのシステムなのだとか。1990年代に著書「患者よ、がんと闘うな」 で有名になり、最近でもがんや検診医療について多く上梓している元・慶應義塾大学医学部専任講師の近藤誠医師は言う。「がんで亡くなったとされる人の多くは、がんが直接の原因ではなく、手術と抗がん剤で死亡している。そもそも健康な人でもがん細胞は毎日何千と作られ、検診の精度が上がれば小さながんでも見つかってしまい、手術をしたがために暴れだす」

 「外科医同士では言ってるんですよ。『手術したら、がん細胞が暴れだしちゃってさあ』とか。でも患者には言わない。言ったら誰も手術しなくなるから。それで手術が終わったら別の病院へ送って厄介払い」。日本の医療費の3分の1を抗がん剤が占め、病院にとってはドル箱。だが実際には白血病など塊を作らないがん以外には、抗がん剤は効かない。

 川島なお美、渡辺淳一、中村勘三郎など、がんが人間ドックで早期で見つかり、手術をしたら、あれよあれよと言う間に病状が悪化して死亡した例は、ほとんどが手術・治療をしていなければ今でも元気だっただろう、と近藤医師は言う。「そもそも、現在の医療システムには治療死というカテゴリーがない。治療で死んだとしても、多臓器不全とかそういう死因をつけられる」

 話は長くなったが、繁殖期を終えた中高年の生き方として重要なのは、失ったものを嘆くのではなく、まだある機能に着目してそれを生かすことだと、中村医師は言う。「オレはここまで以前は15分で歩いて来れたのに、今では杖をついて30分かかる。若い者に追い越されて悔しい」と言う患者がいる。だが誰の手助けも借りずに、一人で自由に移動できるのは素晴らしいことだし、それを生かした生き方を追求したほうがはるかに豊かに生きられる。

 そう考えてみると、自分は確かにくたびれてはきたが、十分自立して生活している。扶養家族もいないし自分の収入は100%自分で使途を決められる。

 あるブロガーが分析した内容が興味深い。「52歳で引退した場合と60歳で引退した場合を比べると、約5000万円の貯金の差がある。つまり、50代の自由時間というのは、一戸建ての家や超豪華客船・世界一周旅行のように、人生を豊かにする贅沢商品の一つ」。そして60歳で一戸建ての家や豪華旅行は買えるが、今さら50代の自由な時間が欲しくても買えない、と。

 がん保険や人間ドックに使う費用をまるごと貯金に回し、まだ余っている体力・気力を、組織の権力争いより楽しく意味のある活動に使うのも、50代の有意義な生き方かもしれない。