2021年5月25日火曜日

時代に取り残されたベッドタウン

  新宿から電車で40~50分。駅近のマンションと戸建て住宅、畑が広がるベッドタウンに異変が起きている。

 志村けん氏の出身地で知られる東村山市。ガイドブックで見つけた北山公園の菖蒲園を目指して西武新宿線の駅を下車すると、意外にもゴーストタウン化しつつある昭和の風景が展開されていた。

 駅前にある花屋の建物は、気の毒なほどボロボロに錆びついている。

 バス通りには、VHSのビデオレンタル店だったと思われる建物がある。シャッターは閉じたままでつる草が生い茂っている。

 介護サービスの事務所。軒にうっすらと残っている牛やブタのイラストから、肉屋だったと思われる。

 
 立川駅北口へ向かうバス通りを行くと、メインストリートとは思えない光景がさらに広がる。


 思わずデトロイト、ニューヨークのハーレム、モスクワ郊外の風景を彷彿とさせた。海外で「ここは危険だから立ち入らないほうがいい」と言われるエリアと似ている。

 ただ全てが廃墟というわけではなく、薬局、マッサージ・整骨院、動物病院などの経営状態は悪くないことが伺える。興味深いことに、都内で土地勘のある場所を再訪した際にいつも気づくのだが、蕎麦屋はたいてい残っている。

 このような現象はなぜ起きたのか? 思いつく点を挙げてみる。

1)大型店舗の進出→オンラインショッピングという時代の流れに乗り遅れた。
2)コロナによる外出自粛や飲食店の規制にとどめを刺された。
3)テレワークの普及で都心から移住する人々は、都会でも田舎でもないベッドタウンではなく、もっと山や海を身近に感じられる環境を選んだ。

 ただし都心から40~50分の郊外であっても、例えば中央線沿線ではこのような衰退ぶりは見られない。各駅周辺が昔から開発されていた地域と、ベッドタウンとして後から開発された地域の違いなのだろうか。
 
 もう一点、興味深いことにバスの運転手は50代後半に見える女性だった。車掌や駅員など、かつては男性しかいなかった職業にも女性が増えているが、バス運転手はまだ珍しい。
 
 自動運転がすぐそこで、定年退職した男性運転手の空席募集をしても、若い人の応募はあまりないのかもしれない。ただ今後数年の職としては、中年女性のセカンドキャリアといった需要があるのだろう。

2021年5月8日土曜日

禁酒3周年

  昨年の今頃に書いた禁酒2周年の感想を読み返してみると、3周年の今も状況は変わらない。こうした感想はすでに当たり前の日常生活で、取り立てて書くほどのことでもない。

 酒は百薬の長、適正飲酒は健康によいなどと言われてきたが、最近の医学論文では百害あって一利なしとする結論が出てきている。覚醒剤に負けずとも劣らない中毒性があり、脳細胞を破壊して肝臓に負担をかけ、不眠の原因を作り出して老化を早める、と。こうした研究動向を紹介し、禁酒をする医師も目立つ。

 確かにアルコールは麻薬物質と言える。お酒を飲むと緊張がほぐれ、パーッと一瞬明るい気分にはなるが、それが現実を変えるわけではない。もし現状に何らかの問題や不満、より改善したい点があれば、酒を飲まずに脳をフル回転させて考え、問題解決のための勉強をするほうが生産的だろう。

 多少の不満はあっても現状を維持したい人には、お酒は日頃の鬱憤を晴らす道具にはなる。だが本気で現状を改善したり、よりよい生活を送りたければ、酔っぱらっているヒマはない。

2021年5月6日木曜日

書評 トルストイ著「戦争と平和」(2)

  著者の名前の響き、そしてタイトルからして大真面目な歴史大作だと思っていた。おそらくそうなのだろうが、最初の20~30ページで思わず吹き出してしまう場面や描写の連続に、こんなに面白い作品だったとは。。と新鮮で意外な発見である。

 これならば1200ページ超のボリュームに圧倒されず、すぐに読み始めればよかった。フランス人の友人がなぜこの本を勧めてくれたのか、今頃になってよく理解できる。冒頭部分だけでも読んでいれば、すごく愉快で意味のある対話ができただろう。

 ロシア貴族のパーティーでこんな場面がある。当時のナポレオンの政策をめぐって出席者の意見が対立。Pierreという出席者がナポレオンを絶賛し、Prince Andrei ("the viscount")が反論する。

"Liberty and equality," the viscount said scornfully, as if finally deciding to prove seriously to this young man all the stupidity of his talk, "these are resounding words that have long been compromised..."

 激しく意見が対立する中、別の出席者Prince Ippolitが突如として登場する。

 Suddenly Prince Ippolit rose and, gesturing for everyone to stay and sit down, began to speak...And Prince Ippolit began to speak in Russian, with a pronunciation such as Frenchmen have after spending a year in Russia. Everyone stayed: so animatedly, so insistently did Prince Ippolit call for attention to his story.

(他愛ない物語をひとしきりして)Here Prince Ippolit snorted and guffawed, far in advance of his listeners, which produced an impression unfavourable to the narrator. Many smiled, however, the elderly lady and Anna Pavlovna (パーティー主催者)among them...here he could no longer control himself and began laughing fitfully, saying through his laughter...With that the anecdote ended. 

Though it was not clear why he had told it, and why it absolutely had to be told in Russian, all the same Anna Pavlovna and the others appreciated Prince Ippolit's social grace, in thus pleasantly putting an end to M'sieur Pierre's unpleasant and ungracious outburst. 

 こうした意表を突いた当意即妙のやり取りが欧州の社交界で評価された、ということだろうか。今ではポリティカルコレクトネスに引っかかるのかもしれないが、ロシア人がわざとフランス語訛りのロシア語を話して場を盛り上げる、というシーンを想像すると笑える。こういうパーティーは確かにinsipidではない。

 ともあれ最近insipidだった私の生活にいい刺激がもたらされ、ぐいぐい読み進んでしまう。

コロナ禍の開業医事情

  美容外科YouTuberの高須幹弥氏によれば、コロナ禍で全般的に開業医の売り上げは3割程度減っている。特に緊急性の高くない治療では、高齢者が感染を恐れて通院を控える傾向にあるという。

 そんな中、東京郊外にある整形外科医院はメチャクチャ混み合っていた。午前中の診察受付を11時に打ち切らないと、午後の診察が回らない日も多いという。私はテニス肘と肩こり用の湿布を出してもらうのに、1時間半も待たされた。院長はパニくった様子で「患者が来すぎて困る」と言わんばかりだった。

 1回に処方できる湿布は70枚までで、私は1日3枚使うので3週間程度で終わってしまう。先生としては通院回数を減らすため、2倍の140枚を出したいのだが、保険の関係でできないと悔しそうに言う。

 その一方で、都心にあるかかりつけの眼科は対照的だった。ドライアイ用の目薬を最大限に出してほしいとお願いしたところ、院長は少し残念そうな表情を浮かべ、「もっと頻繁に通ってほしい」と目で訴えているようだった。

 この差はどうして生まれるのか?

 おそらく都心の開業医の主な患者は、そのエリアに職場のある勤め人なのだろう。だがテレワークが普及して通勤しなくなり、会社の近くのクリニックにも行かなくなった、ということかもしれない。何かあれば自宅付近に通院するようになり、しかもコロナ患者を受け入れている大病院ではなく、小規模な医院を選ぶ人が増えた結果、郊外の開業医はてんてこまい、ということなのだろうか。

2021年5月4日火曜日

書評 トルストイ著「戦争と平和」(1)

 最近はこれまでの人生でも極めてまれなストレスフリーの生活を送っているが、どうも刺激が足りない。現在の生活を自己評価してみると、10段階で健康10、言論の自由10。。と続き、刺激2。要するにヒマなのだ。

 しかしながら、忙しくて刺激があればいいというものではない。いい刺激はよいが、問題や理不尽な状況といった悪い刺激は時間とエネルギーの無駄になる。

 そこで思い出したのが、トルストイ著「戦争と平和」である。和訳でも全5巻、各巻500ページ以上の大作で、私が買ったのは英訳だ。本棚から引っぱり出すと、コンビニの長いレシートを2つ折りにしたものをしおりにしている。日付は2009年12月10日。なんと12年も放置していたのだ。

 当時の日記を読み返すと、ロシア文学好きのフランス人の友人に勧められた、とある。原書はロシア語だが、貴族同士の会話はしばしばフランス語で行われたため、原書でもその部分はフランス語で書かれている。私の買った英訳本ではフランス語の箇所は原文ママで、脚注で英訳が出ている(ちなみに和訳本では、フランス語部分も本文の中で日本語に訳している。)露文英訳の賞を受賞した翻訳家による作品で、アマゾンでも英訳の質の高さを絶賛するレビューが目立ったため、英語とフランス語の勉強のために、この本を買ったことを思い出した。

 12年の歳月を経てついにヒマになり、この大作に取り組む余裕が出てきた。英訳は分冊ではなく1冊にまとめられているが、それでも細かい文字で1200ページ以上ある。だが1日10ページ読んで4カ月で読了すると思えば達成できそうだ。 

 まだ5ページしか読んでいないのに書評を書くのもなんだが、のっけからすごく面白い。高評価の英訳だけあって、英語の語彙も豊富で参考になる。イギリス人の先生に解説してもらい、新たに学んだ表現をまとめてみると。。

put in: give time/effort

Ex) And the fête at the British ambassador's?...I must put in an appearance.

―> put in と言うと必ずしも行きたくはないが、出席を求められた公式の場に行くというニュアンス。本当に行きたければgoでよい。

insipid: lacking in qualities that interest, stimulate or challenge sb

Ex) I confess to you that all these fêtes are beginning to become insipid.

      Before reading this book, I had felt that my life was insipid.   

imbecile: a person that you think is very stupid; a person who has a very low level of intelligence

ulterior: (of a reason for doing sth) that sb keeps hidden and does not admit

Ex) My boss seemed to be an imbecile as he had left his work unfinished for over a decade despite countless reminders, while his Canadian counterpart did it immediately. I wondered if there might have been ulterior political reasons for that.

rapturous: expressing extreme pleasure or enthusiasm for sb/sth

Ex) Americans typically send rapturous Christmas cards that emphasize how perfect their lives are. While I admire their positive attitude, I feel as if I received unsolicited letters of recommendation. 

fetter: sth that stops sb from doing what they want

Ex) After leaving the government, I was finally freed from the fetters of all the guidance and talking points.