2017年8月5日土曜日

東京西部ウォーカー

 合計3年間の海外留学以外、私は東京にしか住んだことがない。

 出生地は千代田区(生まれた病院)、現在は港区在住だが、育ったのは東京西部なので全体的な感覚や価値観、土地勘はそこが拠点になっている。チョコレート色の電車に乗り、独特の発音と語りでまったく理解できない車掌アナウンスも懐かしい。


 中央線に乗り三鷹、立川へと向うと駅に降り立った時の空気がきれいになっていくのを感じてきたが、立川の発展振りは目を見張るものがあり、以前ほどではなくなったような気もする。JRの駅ビルはルミネやアトレに統一されてきたが立川は元々WILLがあり、その後間もなくできた八王子の駅ビルNOWは今でも健在のようだ。


 どうしても妥協したくない買い物(大切なイベントに着ていく洋服など)があれば、とりあえず地元でチェックしたあと立川へ行き、う~~んと思えば念のため吉祥寺を見て、最終的に新宿に出る。最近ではネットショッピングのおかげで、居住地を問わず選択肢が広がった。

 やや大雑把に言えば世田谷区はブルジョアの世界だが、武蔵野市や三鷹市となると元々市民活動家だった菅直人氏の地元でそういったメンタリティーがある。吉祥寺は東京都内でも最も人気のあるエリアの一つとなり周辺の住宅は億を超えるが、それでもエスタブリッシュメントの牙城ではない。むしろ体制に疑問を持ち、人権、環境、遺伝子組み換え食品、汚染などに関心が高いジャーナリストやNGO活動家などが好む土地柄で、そういったカフェも点在する。


 吉祥寺の隣の西荻窪は休日に中央線快速が停まらず、独特のゆるさを醸しだしている。ネコをテーマにした置物、皿、生活用品などだけを集めた店、アンティークショップ、ブティックなど、どうやって商売が成り立つのだろうかと思わせる店も散見され、中央線沿線住民の経済力の底力が感じられる。
 

 最近では中央線が時間帯を問わず混み合っているのに対して、西武新宿線は今でも通勤ラッシュ時間帯以外は余裕で座れる。西武新宿駅がJRや地下鉄からやや離れていることを我慢するか、10分程度歩くことを運動になるとポジティブに捉えることができれば、西武線はJRに対抗して運賃を安く設定しているのでおトクである。


 だがJRも負けずに新宿までの運賃を以前より安く設定し、拝島ー新宿間の運賃を464円と、拝島ー西武新宿間の432円との差額をわずか32円に縮めて、少しでも西武線に客を取られないようにしている。そのため、例えばJRで青梅ー新宿間は799円なのだが、いったん拝島で改札を出てまた入りなおすと、青梅ー拝島間216円、拝島ー新宿間464円の合計で680円と、119円も安くなるという、おかしな現象も起きている。しかしながら、どうせ拝島でいったん改札を出るなら、西武線は32円安いだけではなく拝島始発で座れるので、ほとんどの客は西武線に乗るだろう。

 多くの人が混乱するのが西多摩郡、奥多摩町、西東京市の違いである。「郡」は市町村のうち町村をくくっただけで、別に「西多摩郡」 という自治体があるわけではない。町村の集まりなので、そこには奥多摩町、瑞穂町、日の出町、桧原村がある。以前は五日市町も西多摩郡の一部だったが、秋川市と合併して「あきる野市」になった。

 奥多摩へ行くには青梅線に乗るが、本当に奥にあり、普通電車だと立川から1時間20分近くかかる。

 西東京市は田無市と保谷市が合併したものだ。考えてみれば、田無は西武線で停車はするものの降りたことはない。西武線沿線は今でも完全なベッドタウンで、JRのような途中下車に値する駅は皆無と言っていいだろう。

 一方、JRは青梅線の西立川というユーミンが「雨のステーション」のボーっとした雰囲気に選んだ駅ですら(このため西立川駅では停車すると「雨のステーション」のサビの部分が短く流れる)、今では昭和記念公園の最寄り駅となった。


 そのユーミンは八王子の出身で元々八王子は東京西部の中核都市だし、立川や吉祥寺は言うに及ばず、西荻窪(アンティーク)、高円寺(テレビドラマ「ご近所の星」の舞台)、阿佐ヶ谷(阿波踊り)、中野(中野サンプラザ、オタク御用達、丸井)など特徴のある駅がひしめいている。

 西武線はこうした駅がなく突然高田馬場に到着してほとんどの乗客が降りたあと、やおら新宿の高層ビル街が車窓に登場し、専門学校の看板やサイエントロジーのビルがトム・クルーズを思い出させ、 いきなり都会に飛び込んで行くといった印象である。