2019年5月11日土曜日

ドイツから日本が学べること

 ドイツの紳士服ブランドで婦人物も扱っているHUGO BOSS。ロンドンのお洒落な目抜き通りキングスロード沿い、地下鉄スローンスクエア駅を降りてすぐの所に大きな店舗がある。日本には六本木ヒルズにさらに大きな店があり、GW中にリニューアルオープンした。

 その六本木店にも置いていない素敵なトートバッグが東急百貨店本店にあった。BOSSのホームページにも載っておらず、六本木では取り寄せになるという。

 ちょうどA4が縦に入り(←ココかなり重要)、置いても倒れない構造で、大きすぎず重くなく、紺色で何にでも合う。上が閉まるようファスナーがついていて、飛行機の機内持ち込み荷物として頭上の荷物入れに置いても、中味がこぼれず安心だ。紳士物だがあまりゴツつなく、女性が持っても違和感がない。
 8万8,560円(税込)という値段に少し考えて別のブランドも探したが、上記の条件を満たすバッグは皆無だった。トートバッグは総じて大きすぎるか、小さすぎる。

 東急カードに今入れば2,000円分の商品券をすぐにもらえて、その場で使えるという。さらに2万円以上の買い物をすれば、もう2,000円分の商品券をもらえて、今回の買い物についた2,460円分のポイントとともに次回の買い物に使える。東急百貨店で買えば合計で6,460円も得になる計算だ。

 一方、六本木店ではヒルズカードで820ポイントが貯まるだけで、1,000ポイント貯まって初めて1,000円分の商品券と交換できる。

 問題は"HUGO BOSS EXPERIENCE"という顧客サービスに今回の買い物がどう反映されるか、である。先日六本木店で素敵なノートをもらったばかりなので、六本木店でまとめて買い物をしたほうがいいのだろうか。

 六本木店に聞いてみると、どの店で買おうが関係なく、BOSSのドイツ本社が顧客の価値を判断しているという。なので「東急百貨店で買ったほうが得だと思いますよ」とのこと。六本木店で独自の得意客に何かサービスをしているのか聞いてみると、驚いたことに年間購入額200万円以上が店としての得意客の条件だという。一つの洋品店で一年で200万円も買うわけがなく、しかも件のトートバッグは取り寄せになる。

 こうしてさんざん悩み徹底的に調べた結果、最終的に東急で買うことにした。しかも東急百貨店には店頭品だけでなく、倉庫に新品の在庫もあり、そちらを取っておいてもらった。

 東急によればBOSSのドイツ本部は全世界の顧客一人ひとりがどこで何を買ったかを詳細に把握。そのうえで、ある客が今後どの店で買う可能性が最も高いかを判断し、その店に「素敵なプレゼントを差し上げますので是非ご来店ください」と書いた招待状を発送させる。過去の購入金額の合計で発送元の店舗を決めているわけではなく、合計金額としてはA店のほうが高くても、ここ数回はB店で買っていれば、B店に招待状発送の指令をかけるという。

 たまたまシンガポールの空港免税店で日本の客が何か大きな買い物をしたとしても、海外の店から招待状を送らせることはない。ちなみに招待状には、日本の客であれば日本全国の対象ショップのリストが出ているので、必ずしも本社が招待状発送を指令した店に客が来るとも限らない。 

 どこの店舗で買おうがポイントがつくブランドとしては、ニューヨーカーがある。高島屋で買おうが、軽井沢のアウトレットで買おうが、ニューヨーカーとしてのポイントがつく。しばらく行っていないが、ベネトンも同じようなポイント制があったと思う。

 もう少し大きなくくりでは、日本ではオンワード樫山の作っているブランド(ポール・スミスなど)を対象としたオンワードメンバーズカードがある。例えばポール・スミスでは直営店(六本木、表参道、丸の内、ギンザ・シックスなど)で買うと5%ポイントがつき、百貨店などに入っている直営以外の店では1%しかつかない。

 BOSSのやや変わった面白い点はポイント制ではなく「素敵なプレゼント」であり、誕生日以外はそのタイミングもわからず、行ってみなければプレゼントの中味もわからないことにある。プレゼントというと往々にして、どうでもいいような布製のトートバッグや弁当箱、マグカップが多いものだが、BOSSのプレゼントは決してチャチではなく、BOSSのファンであれば必ず喜ぶような高品質のものだ。

 経済合理性で考えればポイント制のほうが、いくら得になったのかが明瞭にわかる。 だが世の中のあらゆる店がポイント制に走る中、あえてポイントではなく、ドイツ本部による全世界の顧客分析の結果によるプレゼントという概念は、ちょっとした気味悪さを含むエキサイト感があり、少なくとも普通の店とは違うと思わせる。