2024年3月8日金曜日

結婚はトクなのか、損なのか

  久しぶりに会った男友達が「結婚したものの、あまり満足していない」と言う。

 芸術家肌の自由人で絶対に結婚したくないと主張していたが、どうやら妻が金持ちのようだ。

 今まで行けなかったウィーン楽友協会のバルコニー席のコンサート、遠方への海外旅行などの話を聞いた。かなりの締まり屋だった彼の収入が上がったような状況ではなく、逆玉のメリットを受けているようだ。

 すでに年配で残りの人生の年数も限られ、生きているうちにお金がないとできないことをやりたかっただろう。一方の妻は外国人で彼と結婚して得られる国籍やパスポートを得るために必死だったらしい。「仕事を完成した直後、ボロボロに疲れていた瞬間に結婚を迫られ、しなければ別れると脅された」という。

 お金とパスポートのトレード=結婚という図式のようだ。彼にしてみれば、自分よりも若い妻に看取ってもらえば孤独死の恐れがないという考えもあるのだろう。そして彼女は独裁体制の母国に帰る必要もなく、西側で安心して暮らせる。

 一昔前の昭和の結婚とも似ている。女性はお財布、男性は家政婦を求める。

 だが彼は芸術的なセンスや政治思想を追求するうえで、彼女と話していてもつまらないと感じ、そもそも夫婦の半数は離婚するという結婚制度に懐疑的だという。

 この話を聞いて以来、私は結婚のメリットとは何かをつらつらと考えてみた。結論として、経済的に自立して自分の資産に満足していれば、生きるため、あるいは贅沢をするために結婚する必要はない。

 あとは精神的な充足感を得られればいいわけだが、そのために共同生活までする必要はあるのかと言えば、むしろデメリットのほうが大きい。

 具体的に考えてみよう。大きくてトイレが2カ所以上ある家ならよいが、そうでなければ、自分が行きたいと思った瞬間にトイレに行けないこともある。

 同じ寝室で寝ていれば、相手が起きたタイミングで目が覚めてしまい、寝不足になるかもしれない。

 あるいは都心でイベントがあり、最後まで参加すると終電を逃す場合、少なくとも配偶者に連絡をする必要はあるだろう。おもしろい人と出会ってずっと話したくなったという理由で、手料理を用意して待っているパートナーにそうした電話をできるだろうか。しなければ、もっと深刻な事態が生じるだろう。

 私自身はそうした足かせを自らにはめたくないww。実際にはそうしたケースはそう多くはないのだが、先月久しぶりにブリティッシュパブで面白い人たちに会い、スコットランドの話を聞かせてもらった。誰に連絡(=お伺いを立てる)する必要もなく、ホテルに泊まるので終電を気にすることもなく、思う存分楽しめた。

 あとは孤独死だが、いつどんな状況で死ぬかは誰にもわからない。実際、両親が他界した際には急逝だったので家族は誰も間に合わなかった。心中でもしない限り、周囲に人がいようがいまいが、一人きりで死んでいく=孤独死に変わりない。

 これは私自身の感覚なのだが、一戸建てで広い庭のある家に住んでいると、死ぬことが怖くなくなる。

 酷暑で外に出られないでいるとあっという間に雑草が生える。そうするとカマキリがやってきて、晩秋で寒くなると暖を求めて家の網戸にはりついてくる。やがてパタッと落ちて死んでしまう。

 人間はエラそうに生きる意味を考えるが、生物という意味では、ヒトだろうがカマキリだろうが同じである。カマキリは1年しか生きないが、人間で日本人女性なら平均87歳まで生きる。それまで自由に楽しく暮せれば十分ではないか。

 端的に言えば、お金に困っている、あるいはもっと欲しい人は、自分よりもお金があり、それを配偶者にも使う意思のある人と結婚すればトクになる。経済的に自立していて、特に現状以上の贅沢を欲していなければ、よほど配偶者から得られる具体的なメリットがない限り、わざわざ結婚して自由を失う必要はない。