どうやら接戦州をバイデンが制覇して、最終的に勝利を収めるような情勢に見えてきた。だが2000年には大混乱の末、三権分立が機能していないとしか思えない最高裁の判断もあったため予断は許さない。
歴代大統領のうち、私はトランプ、オバマ、ブッシュ父と会う機会があった。クリントンは引退後に東京で講演した際に、大会場の2階席から遠巻きに眺めた。
トランプの印象は政治家というよりビジネスマン。きちっとしたスーツを着て、在日米国商工会議所にいそうなタイプだ。著書を開いて白紙の部分にサインを求めると、表紙を確認してからサインしてくれた。暴露本が多数出ているので、そうでないことを確かめたのだろう。前日の米軍基地でのスピーチに精力を注ぎ、YouTubeでみるとかなり考えて練習したことが感じられる演説だった。だが私が生で聞いたスピーチは誰かが書いた原稿を読み上げるという印象だった。
オバマは大人気で面会イベントの最前列を取るのは困難だった。だが前列にいた別部署の見知らぬアメリカ人男性が、オバマが近づいてきた瞬間に私に握手の機会を譲ってくれたのだ。こんなに貴重なチャンスを日本人の私に与えてくれたことに感謝してもしきれない。オバマの手は柔らかく、握った感じもソフトだった。
ブッシュ父はテレビで見る印象とあまり変わらず、親切にサインをしてくれた。
生クリントンはオーラを感じるにはあまりにも遠い距離だった。私の元上司はクリントン大統領時代のアドバイザーで、自宅にはエアフォース・ワンに同乗した証明書が額入りで飾られている。すごく頭がよく素晴らしい人物だという。別の同僚は面会イベントで緊張して尻込みしていると、クリントンはそれを察知して「あなたは握手しなくていいの?」とすごく優しい表情をし、そのおかげで自然に握手できた。咄嗟に他人の感情を読み取り、人間関係を構築する天才に思えたという。
クリントンは私より20歳年上でお兄さんとお父さんの中間のような年齢である。自伝には普通は親友にも語らないような深層心理や生活の詳細がつづられている。表向きの輝かしい成功した人生と、心の奥に隠していた、アル中で暴力的な継父から受けた傷跡の間でいつも悩まされてきた。このため睡眠時間を削ってでも毎日2~3時間は一人で考えにふけることが必要だという。
大学時代は週25ドルの生活費でやりくりし、週末には14ドルをためてジョージタウンの素敵なレストランに女の子を誘い、二人分の食事代とチップを賄うことができた。法科大学院は学生ローンとアルバイトで生活費を賄い、この体験から大統領に就任後、学生ローンの改革に取り組んだ。卒業後の収入に応じて無理のない返済をできる仕組みを作り、低収入でも社会的意義のある仕事への進路にも進みやすくした。
仕事や人生で「あちゃ~~」としか言いようのない失敗も重ねてきた。学生時代に大統領選で民主党候補の地方支持を固める仕事をしていたとき、極めて重要な会合に党内で最も地位の高い支持者をなぜか招待していなかったことに後から気づいた。当然ながら本人は怒り心頭に発して離れていってしまった。イギリス留学中に米国の運転免許証を置いてきてしまい、帰国後に疲れたまま運転中に事故を起こして留置所に入ったこともある。
数々の失敗や挫折は1)それ以降は決してやらかさないと決意する 2)ネガティブな経験でもポジティブな経験と同じくらい、そこから学んで将来に生かすことが可能 と考えて乗り越えてきた。
こうした貧乏学生や失敗のエピソードから、世界で最も成功した政治家の一人を身近に感じ、いろんなことが学べる。多くの読者にそうした体験を可能にするため、あえてプライバシーをさらけ出す心の広いリーダーだと思う。(敬称略)