2020年11月5日木曜日

ワクワク感を奪う歩道橋シティ

  東京西郊で育った私にとって、立川は最も身近な中核都市である。子供の頃から家族や友達とのお出かけ、買い物、映画などのレジャーで過ごした懐かしい場所だ。

 先日久しぶりに行ってみると、すっかり様変わりしていた。JR立川駅の改札から北口、南口の両方へ広がる大きな歩道橋があり、その下にバスターミナルがある。信号を渡らずにデパート、銀行、カラオケ店などに直接行くことができる。

 この「歩道橋シティ」とでも呼べる開発は大規模なものでは品川、立川と似た大きさでは大宮、もう少し小さめの三鷹と、いずれもJR沿線に見られ、西新宿にも同様の計画がある。

 歩道橋でどこでも行けるのでもちろん便利なのだが、歩いていて楽しいかと言えばそうではない。むしろ無機質なものを感じ、こうした駅の周辺には住みたくないとすら思う。

 その最たるものが歩道橋の域を超えて高度に複雑化した渋谷で、銀座線、半蔵門線、東横線、井の頭線、山手線のそれぞれの渋谷駅から、どこをどう行けばよいのかを理解することすら難しい。このため渋谷乗り換えを避けるようになり、それは渋谷駅周辺の開発者にとってもよくない結果だろう。 

 歩道橋の種類は違うものの、その無機質さを最もよく表しているのは飯田橋だ。おそらく飯田橋の歩道橋を渡りながら、それを楽しいと感じる人はまずいないだろう。

 人間の直感として地上を歩くのが自然で、便利さの追求が快適さに直結するというわけではない。

2020年11月4日水曜日

歴代米国大統領の印象

  どうやら接戦州をバイデンが制覇して、最終的に勝利を収めるような情勢に見えてきた。だが2000年には大混乱の末、三権分立が機能していないとしか思えない最高裁の判断もあったため予断は許さない。

 歴代大統領のうち、私はトランプ、オバマ、ブッシュ父と会う機会があった。クリントンは引退後に東京で講演した際に、大会場の2階席から遠巻きに眺めた。

 トランプの印象は政治家というよりビジネスマン。きちっとしたスーツを着て、在日米国商工会議所にいそうなタイプだ。著書を開いて白紙の部分にサインを求めると、表紙を確認してからサインしてくれた。暴露本が多数出ているので、そうでないことを確かめたのだろう。前日の米軍基地でのスピーチに精力を注ぎ、YouTubeでみるとかなり考えて練習したことが感じられる演説だった。だが私が生で聞いたスピーチは誰かが書いた原稿を読み上げるという印象だった。

 オバマは大人気で面会イベントの最前列を取るのは困難だった。だが前列にいた別部署の見知らぬアメリカ人男性が、オバマが近づいてきた瞬間に私に握手の機会を譲ってくれたのだ。こんなに貴重なチャンスを日本人の私に与えてくれたことに感謝してもしきれない。オバマの手は柔らかく、握った感じもソフトだった。

 ブッシュ父はテレビで見る印象とあまり変わらず、親切にサインをしてくれた。

 生クリントンはオーラを感じるにはあまりにも遠い距離だった。私の元上司はクリントン大統領時代のアドバイザーで、自宅にはエアフォース・ワンに同乗した証明書が額入りで飾られている。すごく頭がよく素晴らしい人物だという。別の同僚は面会イベントで緊張して尻込みしていると、クリントンはそれを察知して「あなたは握手しなくていいの?」とすごく優しい表情をし、そのおかげで自然に握手できた。咄嗟に他人の感情を読み取り、人間関係を構築する天才に思えたという。

 クリントンは私より20歳年上でお兄さんとお父さんの中間のような年齢である。自伝には普通は親友にも語らないような深層心理や生活の詳細がつづられている。表向きの輝かしい成功した人生と、心の奥に隠していた、アル中で暴力的な継父から受けた傷跡の間でいつも悩まされてきた。このため睡眠時間を削ってでも毎日2~3時間は一人で考えにふけることが必要だという。

 大学時代は週25ドルの生活費でやりくりし、週末には14ドルをためてジョージタウンの素敵なレストランに女の子を誘い、二人分の食事代とチップを賄うことができた。法科大学院は学生ローンとアルバイトで生活費を賄い、この体験から大統領に就任後、学生ローンの改革に取り組んだ。卒業後の収入に応じて無理のない返済をできる仕組みを作り、低収入でも社会的意義のある仕事への進路にも進みやすくした。

 仕事や人生で「あちゃ~~」としか言いようのない失敗も重ねてきた。学生時代に大統領選で民主党候補の地方支持を固める仕事をしていたとき、極めて重要な会合に党内で最も地位の高い支持者をなぜか招待していなかったことに後から気づいた。当然ながら本人は怒り心頭に発して離れていってしまった。イギリス留学中に米国の運転免許証を置いてきてしまい、帰国後に疲れたまま運転中に事故を起こして留置所に入ったこともある。

 数々の失敗や挫折は1)それ以降は決してやらかさないと決意する 2)ネガティブな経験でもポジティブな経験と同じくらい、そこから学んで将来に生かすことが可能 と考えて乗り越えてきた。 

 こうした貧乏学生や失敗のエピソードから、世界で最も成功した政治家の一人を身近に感じ、いろんなことが学べる。多くの読者にそうした体験を可能にするため、あえてプライバシーをさらけ出す心の広いリーダーだと思う。(敬称略)

2020年11月2日月曜日

「隠れトランプ」を分析する、隠れトランプ

  高須クリニックの後継者・高須幹也はチャンネル登録者30万人を超える人気YouTuberとして活躍している。本来の目的は同クリニックのイメージ向上、患者獲得なのだと思うが、専門の美容外科の領域を超えて政治・経済など幅広い分野でもコメントしている。最近ではベーシックインカムに反対の意見を表明し、理由として勤労の意義や社会的弱者の保護を語っている。

 通常は詳細な調査と客観的な視点で参考になることが多いが、昨日アップされた「隠れトランプ」に関する動画はかなりひどい。偏向情報による独断でトランプを絶賛し、彼自身が隠れトランプファンなのだろうと思うほどだ。私が卒業した大学院でこのような論文を書いたら、あまりのお粗末さで間違いなくFail(不可)だろう。

 彼の主張はこうだ。世論調査には表れない「隠れトランプ」は米国有権者の10%を占める。2回目のテレビ討論会で、バイデンが脱石油と再生可能エネルギーへの移行を表明したのは致命的だった。石油や自動車産業を基盤とする接戦州での敗退は必至だろう。バイデンの息子が修理に出して取りに来なかったPCからは、未成年者との性交や中国との関連を示唆するデータが発見されたようだ。この時期にこんなニュースが出たことで、さらにトランプに票が流れる。

 う~~ん。。人気YouTuberがこのような動画を流すのは危ない。そう思った私は、日頃はロムっていたものの初めて幹也の動画にコメントをつけた。以下にコピペします。

「脱炭素と再エネはもはや世界の流れでしょ。コロナや科学全般に関するトランプの無知さ加減には触れないの?『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』も前代未聞の政治意見を出してトランプ反対を打ち出しているし、そういう動きは無視なの? 幹也先生らしくもっと幅広い視点はないのかな。あるいはトランプが好きだから、そっちの方向に持っていきたいだけ? ちょっとこの動画は残念すぎる」

 2時間後、別の視聴者も「米国の知識人や女性の大半、有色人種は間違いなく今回はバイデンに投票する」として、幹也への反対意見を述べた。それはそうだなと私も思う。

 だが表向きには善良な市民と思われる人物でも、実は隠れトランプ支持者なのかもしれない。フロイトは言った。人間の自我は「超自我」(親や先生の教え、社会ルール、規範、理想)とリビドー(性欲、食欲、本音)のせめぎ合いである、と。能力や自信がない人ほど、人種や性別といった能力とは関係のない理由で他人を差別し、リビドーに走る傾向はあると思う。かつては優遇されたが今では自信を喪失した白人や男性の相当数が、ポリティカル・コレクトネスを真っ向から否定するトランプが登場したことで勢いづき、有色人種、外国人、女性を蔑視する傾向を増長させている傾向はあるかもしれない。

 米国大統領選はあくまで米国民の選択であり、外野がガタガタ言うのは内政干渉なのかもしれない。だが世界一の経済大国で強大な軍事力を持つ国の行方は、世界全体に大きな影響を与える。(敬称略)