最近の日経新聞の記事を読んで、"Don't put all your eggs in one basket"という諺を思い出した。
バブル期に国立大工学部を卒業し、有名企業に入社したA氏。モーレツ社員として働きすぎて健康を害すも、見事復帰して執行役員に出世して年収2000万円。だが判子つきや接待ゴルフの調整ばかりでやりがいを感じない。就活塾の自己分析で教育関係が合っていると言われ、年収700万円の地元企業に転職。だが突然現れた幹部を社員たちは受け入れず、居場所がなく1年で退職。知り合いのつてで学習塾の責任者として再出発した、という話だ。
世の中には確かに判子つきや接待ゴルフよりも、やりがいのある仕事があるだろう。だが一方で、執行役員には判子つきや接待ゴルフ以外の仕事もあるのではないだろうか。というか判子つきということは、なにかのプロジェクトの承認をすることで、物理的に判子を押すだけでは当然ない。
そもそも人生の生きがいの全てを仕事に求めるのは違うのではないかと思う。まじめで勉強熱心な人ほどバカバカしい仕事に耐えられず、メディアに登場する生き生きとした職業人に触発され、今よりもっといい職場があるに違いないと夢見る。青い鳥がどこか別の場所にいて、現状を否定して常に青い鳥を追い続ける。日経新聞の記事に登場するA氏もその一人だ。
私の率直な感想は「仕事に期待しすぎじゃないですか」。A氏は世間知らずで正しく自己評価できていない感じもする。オレは有名企業で執行役員だったんだから、中小企業ではなおさら他の社員より優秀なんだし、だから自分のやり方が正しい、と思っていたのではないか。だが実際には大手と中小では求められる能力も違うし、新しい職場に行けば誰でも新人なのだから、まず組織がどう動いているのかを知る必要がある。それには最低3年はかかるのではないだろうか。
まあ私がA氏だったら、この記事に登場する転職エージェントが言うように、絶対に転職はしないだろう。年収2000万円で判子つきと接待ゴルフばかりなら、そんなにきつそうな仕事ではなくコスパはかなりいい。今まで身を粉にして働いてきたご褒美だと思って、ありがたく受け取ればよい。やりたいことがあれば残ったエネルギーと時間を使ってやったらいい。