プロ野球の選手生命は短い。30代後半までに引退する選手が大半である。高卒18歳で入団して38歳で引退として20年、それでも長いほうだろう。大学や社会人の経験があれば、さらに短くなる。
その短い選手生活の年間スケジュールはかなりきつい。
私が子供の頃は年間130試合だったが、今では143試合。うち梅雨時に交流戦で遠方への遠征がある。それに加えて、各リーグ3位以上(つまり半数)の球団はクライマックスシリーズ(CS)、CSを勝ち進めば日本シリーズと全日程が終了するのは11月。
WBC(4年に1度)出場となれば3月から真剣勝負が始まり、海外出張もある。こうした過密スケジュールのためか、WBC組は体調不良で公式戦を離脱するケースが相次いだ。
地球温暖化で夏の暑さは厳しさを増し、状況はますます過酷になっている。
先日神宮で観戦した際には、体温超えの暑さは一段落していたものの、最高気温30度で真夏の西日が試合前練習のグラウンドに照りつけていた。ベンチで見守る岡田監督もいかにも暑そうだった。選手がユニフォームを着込んで動き回っているなか、自分だけうちわであおぐわけにも行かない、という感じにも見える。
それでもこの日は午後7時、7時半、9時と夜が更けるにつれて涼しくなり、心地よい風も吹いて、帰る頃にはかなり快適だった。しかしながら、今日のような日中の最高気温が37度超えで熱帯夜と言われる日はきついだろう。
野外球場に上から屋根をかぶせた設計のベルーナドーム(西武球場)は、側面が外界とつながっているものの、完全な野外施設より風通しが悪いためか、かなり暑いらしい。ツイッターで検索すると「自然サウナ」「暑いので気をつけてください」といったワードが並ぶ。
完全なドーム球場で空調が効いていればラクではあるだろう。それでも試合がない日は月曜くらい、しかも移動日のため休日というわけではない。週休2日のサラリーマンと比べてかなりきつい。
FIRE生活でダラダラしている私からすれば、週5日・毎日8時間拘束されるだけでも信じられず、よくやったなと感心する。酷暑の日にはエアコンをかけた家にこもっていられるほど快適で贅沢なものはない。つくづく命拾いしていると実感する。
野球を観戦する側の視点で言えば、年間143試合もの公式戦があっても、全てを観るわけではない。正直なところ、毎日観ていると飽きてくる。週2~3日ほどテレビ、月1位で観戦に行くのがちょうどよい。
私の個人的な感覚では、同じカード三連戦を週1ペースくらいでいい。そうすれば移動日1日+週休3日となり、選手への心身の負担もかなり軽減されるだろう。少なくとも夏場はこれくらいにしたらどうだろうか。
そうすれば肉離れ、腰痛、肩の痛みといった「勤続疲労」も減り、選手生命も延びるのではないだろうか。40代半ばくらいまでは普通に選手生活を送れるとなれば、プロ野球選手を目指す人も増えるかもしれない。その結果、さらにプロのレベルが上がり、観る側もより楽しめる、という好循環が生まれる気もする。
阪神・岡田監督の父親は熱狂的な阪神ファンで「タニマチ」と呼ばれるパトロンだった。そうした環境に育ち、生涯野球人生を送ってきた岡田監督には3人の息子がいるが、三菱商事勤務、医師など野球とは全く違う分野に進んでいる。同じく元阪神・西武の田淵選手の息子はフジテレビで野球中継のアナウンサーをしている。
想像ではあるが、短い選手生命や負担を考えると、親として同じ道を勧めるのはためらったのかもしれない。だがもっと快適な環境で長く選手生活を送ることができれば、より多くの人が子供の頃の夢にとどまらず、職業としてプロ野球選手を真剣に検討するのではないだろうか。
岡田監督のインタビュー記事を読んでいると、20代の若い選手が経験不足からくるミスをすることへの歯がゆさがにじみ出ている。30代半ばまでの体力勝負ではなく、より経験にもとづく頭脳プレーや咄嗟の判断力を披露できるベテラン選手が増えれば、監督のストレスも減り、観る側も楽しみが増えるのではないだろうか。